「ガソリン補助金」12月以降も“継続”…ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」凍結“解除”は「見送り」か?【税理士解説】
50年間続く「高い税率」…なぜ?
ガソリン税のトリガー条項の「凍結解除」の是非を議論する以前の問題として、そもそもなぜ、「暫定税率」だったはずの現在の高い税率(1リットル53.8円)が50年間も維持されているのか。 黒瀧税理士:「もともとガソリン税は、使い道が道路整備・維持管理等のためだけに限られる『道路特定財源』でした。そして、1974年に『暫定税率』が導入された理由は、『道路整備の財源が不足している』というものでした。 その後、道路の整備水準が向上し、政府は『特定財源税収が歳出を大幅に上回ることが見込まれる』(※)と認めるようになりました。 そうなれば、少なくとも『暫定税率』を廃止し、元の『1リットル28.7円』の『本則税率』に戻すのが筋だったはずです。 しかし、いわゆる『構造改革』の一環として、2005年に当時の政府・与党が決めた方針に基づき、2009年以降、ガソリン税は『道路特定財源』ではなくなり、使途が限定されない『一般財源』に組み入れられました。 その際、『暫定税率』は『特例税率』と名前を変えて『1リットル53.8円』のまま維持され、現在に至っているのです。政府は税率を維持する理由として『厳しい財政事情』と『環境面への影響』を挙げていました(※)」 ※参照:国土交通省「道路特定財源の一般財源化について」 つまり、ガソリン税の税率を「1リットル53.8円」とする理由が、もともとの「道路維持等の費用の不足」から、「厳しい財政事情」「環境面への影響」にそっくり差し替えられたことになる。 黒瀧税理士はこの点について、憲法・税法理論上の問題があると指摘する。 黒瀧税理士:「政府の提案で一時的に税率を引き上げた場合に、後でその理由が失われても、『新たに何らかの理由・名目を設けさえすれば、まったく同じ税率をそのまま維持して構わない』ということになりかねません。 その意味で、税金に関する事項を国民代表機関である国会が決め、コントロールするという『租税法律主義』(憲法84条)が、事実上骨抜きにされているのではないかという指摘がなされています」
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