銀行員「お父さんに隠し子が」…“不毛な議論”に子を巻き込まないために、余命宣告後の森永卓郎氏が真っ先に着手した「生前整理の最優先事項」
戸籍謄本を集めるために各地を奔走!
銀行支店を特定できても、さらに高い壁が存在する。 私が銀行に父の口座があるかを問い合わせると、銀行は、まず相続人全員の承諾書と父が生まれてから死ぬまでの戸籍謄本をすべて集めてくるように言った。なぜそんなことをしないといけないのかと聞くと、「お父さんに隠し子がいるかもしれないから」と言うのだ。 「父に隠し子なんていません」と主張したのだが、銀行は取り合ってくれなかった。父は全国を転々としていたので、戸籍謄本を集めるだけでもたいへんな苦労をした。地方の市役所には手紙を書き、返信用の封筒を用意し、そして戸籍謄本の発行手数料分の定額小為替を同封した。 そして、1番手間取ったのが東京都の文京区役所だった。文京区役所の庁舎は、東京大空襲で焼け落ちていた。だから、父の戸籍も焼失して残っていなかった。銀行でその事情を話すと、「文京区役所に空襲で戸籍を焼失したという証明をもらってきてください」と言う。ところが、区役所は「そんな書式は存在しない」と言うのだ。すったもんだの末に、区役所が特別に証明書を発行してくれることになったが、それまでに大きな手間と長い時間がかかった。
今のうちに対策するも…
結局、父の戸籍謄本をすべてそろえるだけで3ヵ月はかかったと思う。 そして、銀行で口座の存在が確定すると、今度は預金通帳の再発行や、印鑑を改めるための改印申請をしなければならない。結局、すべての作業が終わるまで、半年くらいの時間がかかった。 父が亡くなる直前に東日本大震災が発生し、私の仕事が軒並みキャンセルになった時期だったので預金の整理ができたが、もしそうした特殊事情がなければ、相続税の申告に間に合わなかったと思う。 そのときのにがい経験があったので、父が亡くなった直後、私は自分自身の預金口座、証券口座の一覧表を作成して、パソコンのハードディスクに保存していた。 余談だが、数年前にそのパソコンが“突然死”してデータを取り出せなくなった。幸い妻のパソコンにバックアップがあったので、事なきを得たが、ハードディスクだけでの保存は危険だ。 そのときに作成した私の金融機関のリストを退院後すぐに長男と次男にメモリーカードに入れて渡したのだが、何しろ13年も前に作ったリストだ。さらに、いくら相続人といえども、他人が預金を引き出すのには、相当手間がかかることは父の預金引き出しでわかっていた。 いざ、口座を一本化 そこで、私は預金口座の一本化を進めることにした。私の預金は10の金融機関に分散していた。銀行の経営不安が高まったときに、預金保険の対象になるように細かく分けたことも、数が多い原因だった。 それを一本化しようとして、通帳を探したのだが、なんと半分近くの預金通帳が見つからなかった。そして、銀行印も見つからないか、どの印鑑を使っていたのかわからなくなっていた。 歴史は繰り返すではないが、父のときと同様に通帳の再発行や改印申請を今度は私自身の口座でやる羽目になった。ただ、13年前とくらべて明らかに違っていたのは、銀行窓口の待ち時間だった。いまはリストラで銀行支店の人員が大きく削減されている。だから、預金の解約だけで、通帳がないと2~3時間待たされる。 ある銀行では、改印をするだけで3週間くらいの時間がかかった。結局、空き時間に優先して銀行回りをしたのだが、一本化の作業が終わるまで3ヵ月の時間を要した。これで相続の際に子どもたちの作業は大幅に減るはずだ。 森永卓郎 経済アナリスト 獨協大学経済学部 教授
森永 卓郎
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