「戦争に慣れることは不可能」ウクライナ・ドニプロ市長インタビュー : 民主主義国家の努力が悪の枢軸のネットワークを打ち破る
日本の支援に感謝
―4月に大阪市を訪問し、復興支援に関する確認書を結びましたね。 大阪市とは戦争開始後の2022年7月に市民交流や経済協力などに関する「友好協力関係構築に関する覚書」を締結しました。国内の重要拠点都市としての共通性などを考慮したものです。大阪市からは救急車などを提供してもらいました。今回は戦争終了後にドニプロ市の復興に大阪市が協力するという追加の合意が目的でした。日本側からは、これまでも国際協力機構(JICA)が、ロシアの攻撃によって生じたがれきを処理するため、ダンプトラック、クレーンなど多くの重機をドニプロ市に提供してくれました。これらは、精神的な面も含め、ドニプロ市民とウクライナ全国民に対するとても強い応援のメッセージであり、感謝しています。 ―市長は日本とウクライナの架け橋の役割も担ってきました。 そもそも東欧では、武道やアニメなどの日本文化に対する興味を持つ人は少なくありません。私は子供の頃から柔道や空手など日本の武道に真剣に取り組んできました。日本史を勉強し、禅の思想にも興味を持ち、根付など日本美術の収集もしています。14~15年には国会議員として日本との議員友好団体の代表を務め、15年の市長就任後は、市内で日本や日本文化を普及させるプロジェクトを支援してきました。当時のウクライナ駐在の日本大使、角茂樹さんとも協力し、市内での桜の並木づくりや日本の芸術や文化に関わるフェスティバルも実施しました。私には日本愛があり、これからも持ち続けていきたいと思っています。
民主主義国家全体の支援を
―日本に願うことは。 日本など民主主義国家全体からの財政面、外交面での積極的な支援を期待しています。ウクライナでの戦争が始まって以来、世界は変わりました。ロシアなどの「悪の枢軸」のネットワークが形成されたのです。民主主義国家全体の努力によってのみ、このネットワークを打ち破ることができます。このプロセスから距離を置くことはできないことを、日本でも理解してもらいたいのです。
【Profile】
ボリス・フィラトフ ウクライナの弁護士、実業家、ジャーナリスト、政治家。2015年11月よりドニプロ市長。日本の歴史や文化に深い関心を持ち、03年から根付を収集。11年から14年まで国際根付コレクター協会のCIS諸国支部長を務め、11年秋に高円宮妃殿下に拝謁。