「戦争に慣れることは不可能」ウクライナ・ドニプロ市長インタビュー : 民主主義国家の努力が悪の枢軸のネットワークを打ち破る
―住民はある程度戦争に慣れてしまった、ということですか。 戦争に慣れることは不可能です。そして、戦争を経験したことのない人に、その感覚を理解することはできないでしょう。確かに、市街地の様子は戦争前と比べ、大きくは変わりません。外国人ジャーナリストなどがドニプロに来て、戒厳令下にある人々の生活を見ると、「従来の平和な生活と区別がつかない」「高齢者が公園でくつろいだり、母親がベビーカーや子供を連れて歩いたりしている」などと描写します。しかし、私はこれを「幻想」と断言します。カフェや病院、公共交通機関がいつも通りに稼働していても、住民は空襲におびえています。実際、市内では数日に1回ミサイルが着弾し、2週間に1回ほどロシアからの砲撃があるのです。この恐怖は、体験し、目で見ないと分からない。戦争は戦争です。戦争は私たちの社会に数十年たっても治らない傷跡を残しています。
―子どもたちは学校生活をどのように過ごしていますか。 登校とオンライン授業の2通りの方法があります。防空壕(ごう)がある学校に近い地域の子どもたちは登校して授業を受けます。一方、防空壕が無い学校のエリアの子どもは、自宅でオンライン授業を受けるか、通学バスなどで防空壕がある学校に行きます。いずれにしても、子どもたちは空襲時に身を守るためすぐに所定の場所に避難することになっています。
移民危機狙うロシア 戦争犯罪だ
―ロシアはミサイルで3月にドニプロの水力発電所を攻撃しました。ロシアによるウクライナ国内の発電施設への攻撃は、戦争が始まって以来、180回にも及んでいます。影響は大きいですか。 ウクライナは全土で電力不足に陥っており、計画停電を実施しています。次の冬の暖房は既に大きな課題です。現在、冬に備えてすべての市長や地方自治組織、政府が、暖房機器の導入を急ぐなど冬を乗り切る準備をしています。残された時間は多くありません。ロシアは電力施設などへの攻撃を続けることで、ウクライナという国を完全に崩壊させ、ウクライナの都市の人口を流出させ、ヨーロッパ全体に移民危機を引き起こすつもりでしょう。これは戦争犯罪です。 ―ドニプロ市の住民はどのように戦争に向き合っていますか。 私たちは道徳的にも心理的にもドニプロから一歩も退かず固く守ろうと心に決めています。ウクライナ軍は、ロシア国内のカザフスタンとの国境にあるオレンブルク州オルスクでウクライナの無人機がロシアの早期警戒レーダーを攻撃したと発表しました。ウクライナによる遠隔地での攻撃能力を証明したものです。これに対し、ロシアは「越えてはならない一線がある」と警告声明を出しました。この声明について、私たちは単なる脅迫と心理的な揺さぶりだと受け止め、平常心を保つようにしています。戦争中、人は気持ちの揺れが大きくなります。だからこそ私たちはお互いに支え合い、肩を組むのです。これは独立のためだけでなく、国の存続そのものを賭けた戦いなのです。