<大阪ダブル選>数字で見る大阪の課題 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
●大阪都構想
このように収入の減少と高齢化にともなう支出(国民健康保険や介護保険)また生活保護の増大は大なり小なり地方都市が抱えている普遍的な課題です。橋下市長が進めてきた「大阪都構想」は政令指定都市が道府県の事務権限の大半を握るため府と市の仕事が重なる二重行政を生じてムダが多いため、大阪市を解体して東京23区のような特別区に整理し直し身近なサービスに徹し、その他の広域に関わる行政は大阪「都」に委ねるというアイデアでした。 それに対して反対派は再編の効果があいまいであるとか5つの特別区を作るとなると新たにかかる区長や区議会議員の給料や新庁舎の建設などの経費こそムダであると訴えてきました。都構想を掲げて臨んだ前回のダブル選挙では知事、市長ともに押さえた維新も15年の「都構想にイエスかノーか」を大阪市民に問うた住民投票で賛成49.62%、反対50.38%と わずかの差で敗れています。橋下氏が提起した問題意識を市民も共有しつつも、区の枠組みをめぐる議論が先行するなど戸惑いも多くなって民意が別の選択をしたようです。 今回のダブル選挙で、維新は再び都構想を掲げました。自民推薦の候補は反対しています。維新には直近の民意で否決された構想を再び持ち出す不可解さが、自民推薦には反対はいいとして前述のような課題をどう解決するのかの説明不足が、それぞれ指摘されています。 政令指定都市は大なり小なり大阪市と似た問題を抱えています。二重行政はもとより大きい分だけ住民サービスに目が留まりにくくなる点や道府県の役割分担のあいまいさなどです。2010年に指定都市市長会が提唱した「特別自治体構想」は都構想とは逆に財源や権限を市に集中させる形での二重行政解消案でしたが、道府県との綱引きが続いていて目立った効果をあげていません。道州制の議論も止まったまま。 このままいくと全国平均で2040年には高齢化率が36.1%まで進みます。方法は何であれ持続可能な自治体経営のアイデアを出さないと立ちゆかなくなる危険が大きいのが実情です。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】