村上春樹「日本語に訳すのがとても難しいタイトル」と語る小洒落たジャズソングとは?
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。5月26日(日)の放送は「村上RADIO~マット・デニス・ソングブック~」をオンエア。「ソングブック」シリーズ第4弾は、作曲家にしてピアニスト、アレンジャー、そして歌手としても活躍したマット・デニス特集。この記事では、中盤3曲について語ったパートを紹介します。
◆Frank Sinatra「Violets For Your Furs」 ◆John Coltrane「Violets For Your Furs」
フランク・シナトラが「Violets For Your Furs(コートにすみれを)」を歌います。1941年にシナトラの歌でオリジナル・ヒットしましたが、これはシナトラが1954年にキャピトル・レコードのために再録音したものです。1941年当時、シナトラとマット・デニスは、ともにトミー・ドーシー楽団に属していました。シナトラは歌手として、デニスは作曲家兼ピアニスト兼アレンジャーとして雇われていました。当時のドーシー楽団にはシナトラとジョー・スタッフォードという強力なシンガーが揃っていたので、デニスの歌手としての出番はありませんでした。 「雪のちらつく冬のマンハッタン。でも君の毛皮のコートにつけるために、スミレの花を買ったら、とたんにあたりは春のようになってしまった」という歌です。この曲はジョン・コルトレーンも取り上げて有名になりました。まずシナトラの歌で聴いて、それから途中でコルトレーンの演奏に切り替えます。
◆The Pied Pipers「Let's Get Away From It All」
これは前にもこの番組でかけた記憶があるんですが、まあずいぶん前のことなので、またかけますね。パイド・パイパーズの歌う「Let's Get Away From It All」。 トミー・ドーシー楽団が抱えていた男女混合のボーカル・グループです。とても洒落たモダンなハーモニーで、一世を風靡(ふうび)しました。当時の人気バンドは実に大がかりなビッグ・ビジネスだったんですね。バンドの演奏者たち、男女の歌手、ボーカル・グループ、アレンジャー、作曲家、みんな丸抱えして全米を移動していました。とくに人気のある歌手を抱えているか、いないかは、バンドの人気に大きく作用しました。これはドーシー楽団の解散後、1957年にパイド・パイパーズがステレオで再録音したものです。 「こんな面倒なところはさっさとおさらばして、素敵なところに2人で逃げてしまおうよ」という、“旅行のすすめ”みたいな歌ですね。世界各地の観光名所が出てきます。
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