中山秀征 56歳、僕を救ってくれた上岡龍太郎さん、志村けんさんの言葉「いつまでもバカでいろ」
海千山千の芸能界を肩ひじ張らないスタンスでサバイブしてきた中山秀征(56)。共演者の魅力を最大限に引き出す力は以前から定評があったが、最新の書籍『いばらない生き方 テレビタレントの仕事術』(新潮社)が発売前に重版がかかるなど、その哲学と戦略に改めて注目が集まっている。そこで本人を直撃したところ、テレビでもおなじみの淀みないトークを目の前で展開。これまでの半生からテレビの未来図まで縦横無尽に語ってくれた。(全4回の4回目) 【写真】著書でこれまでの半生を綴った中山秀征 ありがたいことに「中山秀征が関わると長寿番組になる」って言われることがあるんです。それはなぜなのか自分なりに分析してみると、やっぱり僕自身が変化しているからだと思うんです。マンネリにならないように気をつけています。結局、“変わらない=古くなる”ということですから。 でも難しいのは、番組のカラーが極端に変わったらダメだということ。黒髪の子が急に茶髪になったら、観ている人もついてこれないので。そこは騙し騙しというか、変化していると気づかれないように変化していく必要がある。 僕も今では56歳になって、若い人から「バブルの時代はどんな感じだったんですか?」とか聞かれることもあるんです。彼らが昔話みたいに過去のことを知りたいなら、自分なりの体験談を話すことはできますよ。 僕らだって先輩方に「石原裕次郎ってどんな方だったんですか?」「当時の日活は誰が出入りしていたんですか?」と興味津々で聞いていましたし。だけど、自分から「俺らの時代はこうだった」とか絶対に言いたくない。だって今の時代は当時と違うんだから。当時は可能だったけど、今は無理ということだってたくさんありますし。 さらに今は上の立場の人が「あれやれ」「これやれ」ってストレートに言うのも難しいえ時代でしょう。そうすると、問われてくるのは自分自身なんですよ。
志村けんさんの「いつまでもバカでいろ」という言葉
例えば、大谷翔平選手を見てください。大谷選手は自分の頭で考えて、人生を切り拓いてきましたよね。『巨人の星』の星飛雄馬のように、父・星一徹にスパルタで鍛えられて、あそこまで到達したわけではない。つまり今の若者は星飛雄馬じゃなくて、大谷翔平にならなくちゃいけないということ。これは本当に難しくて厳しい話なんだと僕は思っています。つまり、才能が必要なうえに、自分で努力もしなくちゃいけない。誰かが1000本ノックで鍛えてくれないわけで、確実にシビアな時代になっているのではないでしょうか。 人生を山登りに例えるなら、僕だってできることなら最短距離で頂上まで登りたいです。でも、登れなかった。でも遠回りしても自分なりの努力を重ねていたら、思いがけないことに最短で登った人とは違う景色を見ることができて、そこでの経験が活きてくることが多かったんです。 この山登りの考え方は上岡龍太郎さんに教わりましたね。「つらいと思うのは登っているときだ。楽だと感じているのは下ってるときだ」って。だから自分でつらいなと感じるときは、「よし! 苦しいってことは今の俺は確実に成長しているぞ」と鼓舞するんです。 振り返ってみると、僕は先輩方の言葉に救われてきましたね。志村けんさんの「いつまでもバカでいろ」という言葉もそう。「年齢を重ねると、みんなどんどん偉く・賢く見せようとする。本当は賢くても、あの人はバカだなあと思われることが大事なんだ」って繰り返していました。それはすごく印象に残っています。 「昔はよかった」なんて言う気はまったくないけど、バブル時代のテレビは浮かれていましたよね。収録が終わると全員で飲みに行って、結局はそこでも仕事の話をすることになって。実際、決定権のある人が飲みの席にはいましたし。今はプロデューサーだって自分1人の意見ですべてを決められない。『DAISUKI!』のネタにしたって、「今、新しく住むところを探しているんだよね」みたいな会話から「物件探しで1本作れないかな」と広がっていったわけですから。飲み屋での会話が、そのまま番組になった時代。