「kiki harajuku」がイノベーティブな日本料理店「野田」に魅惑のリニューアル
一口目はエスニックな味わいながら、ねっとりとした口当たりのアオリイカの甘さがシャインマスカットの甘さをたたえて次第に開いていき、シャキシャキとしたパクチーの茎の食感と青い味わいが後からジワジワと香り立つ。
伝統的な日本料理を別の視点で一皿に昇華した「揚げ海老芋 毛蟹と銀杏」
「揚げ海老芋 毛蟹と銀杏」は、日本料理で秋に食される一番だしの風味をまとわせた揚げ海老芋と、ポルトガル料理のバカリャウ(干し鱈)のコロッケを参考にしている。バカリャウのコロッケには干し鱈、オリーブ、イタリアンパセリなどが使われるが、野田シェフは一番だしで炊いた海老芋に、干し鱈を北海道産の毛蟹、オリーブを銀杏に、イタリアンパセリを長命草に置き換えた。
トップには毛蟹と揚げたカリフラワー、柿酢で味付けした菊の花を添えてある。高嶺の花のような凛とした佇まいからは想像できない、新感覚の多彩な味わいが口の中に広がるが、ホクホクの海老芋、だしの味わいはどこか懐かしさも覚える一皿だ。細部まで洗練された可憐な見た目、意外性のある食材の組み合わせと相乗効果で生まれる新たな味、そこに親しみのある味わいが同居するのが野田シェフらしさなのかもしれない。
梅醤油や赤シソ、キャットミントの花が香る「骨抜き秋刀魚の炭火焼き」
「骨抜き秋刀魚の炭火焼き」は、秋刀魚を背開きにして骨を抜き、形を戻してから波打つように串打ちして、開いたときに取り出した内臓を使った肝醤油を塗りながら炭火焼きにしている。そこに赤軸ほうれん草を、キノコのような香りがするキャットミントの花、自家製の梅醤油と赤シソの身の醤油漬けでおひたしにして、直火焼きしたパプリカ、もみじおろしを合わせた。仕上げに小豆島にある八木農園のコールドプレスオリーブオイルを回しかけてある。
肝の苦味としっかりとうま味をたたえた秋刀魚、キャットミントの花のハーブ感やシソやもみじおろしの清涼感が骨抜き秋刀魚の炭火焼きに新たな魅力を与える一品だ。
ナチュラルワインや燗酒、焼酎、ノンアルドリンクなどペアリングも充実
「骨抜き秋刀魚の炭火焼き」に野田シェフが合わせてくれたのが、燗酒だ。一見甘そうに見えるにごり酒の「玉櫻」だが、苦味と酸味がしっかりとした力強い一献で、炭火焼きの秋刀魚の味わいにも負けない。