こんな会社に入りたいか?という疑問点を補う、俳優の演技と監督の演出力『六人の嘘つきな大学生』
浅倉秋成が2021年に発表した同名小説の映画化、『六人の嘘つきな大学生』。これまでに漫画や舞台、ラジオドラマ化がされたが、映像化としては、これが初めてとなる。 【写真】映画『六人の嘘つきな大学生』 7月に公開された『もしも徳川家康が総理大臣になったら』で共演したばかりの赤楚衛二と浜辺三波の再共演、乃木坂46卒業後の映画出演となり、来年の3月には初主演作となる『山田くんとLv999の恋をする』が公開予定の山下美月の本格的演技など、出演者としては、魅力の詰まった作品だ。 題材という点でいえば、これまでにも就職活動に焦点を当てた作品は、いくつか制作されている。例えば『何者』(2016)や『インターン!』(2016)など。海外作品にまで視野を広げればシリアスやコミカルなど、アプローチは様々だ。 もしくは自由度の高い社風が垣間見える、クリエイティブ系のユニコーン企業を舞台としたドラマでいえば、「ユニコーンに乗って」や「西園寺さんは家事をしない」などもあったりするが、就職氷河期の2000年代が舞台かと思うほど、ガチガチな就職戦争を描いている今作は、逆に斬新だった。 それは個人を尊重するといわれる現代において、面接のために作り出す、いつもとは違う自分。結果的に個性を押さえつけるような集団面接、グループディスカッションという形態で、個人の本質を引き出そうとする就職活動を、現代を舞台に描くこと自体が時代と逆行しているようにも思えるからだ。 世間のイメージは自由度が高そうに見えても、現実は氷河期と変わらないという主張があるのかもしれないが、それにしても今作のなかで描かれているグループディスカッションの場合は、極端なほどに誇張されており、確実にブラック企業。厚生労働省の窓口に言えば、即動き出しそうなレベルの案件だ。 そもそも超大手企業という設定なのに、一人しか採用しないというのもおかしな話。そんな厳しい条件なのに、所々にユルそうな社員もいたりする。実はこのいいかげんそうな人材選出は、後々主題と関わってくるだけに、全体を通して企業というものの危うさが散りばめられていたりもする。