日本のIT株に再評価機運、荒れる円に耐性-デジタル投資も追い風
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平シニア上席投資戦略研究員も、日本のIT関連株が為替の変動から逃れるための有力な投資先とみる一人だ。IT関連の多くはグロース(成長)株のため、金利上昇によるマイナスの影響を受けている面はあるが、関連企業の多くは「国内で開発・販売しているビジネスが多く、為替の影響は相対的に他のセクターに比べて小さい」と言う。
一方、ITベンダーは、株価収益率(PER)が過去10年間の上限近くで取引される銘柄も多く、株価は既に割高と判断することも可能だ。加えてIT人材が不足しているため、業界全体の需要の伸びに対し機会損失につながるリスクもある。
経済産業省の試算では、30年時点で最大約79万人のIT人材不足に陥る見通し。情報処理推進機構がまとめた「DX白書2023」によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める人材が「大幅に不足している」と回答した国内企業の割合は52%と、1年前の31%から大幅に増えた。
それでも、円相場の先行きが不透明な現在、為替の波乱を回避できる可能性がある業種や銘柄は日本株投資家にとって貴重だ。
円は29日に対ドルで一時160円17銭と34年ぶりの安値を更新した後、一気に154円台まで3%以上急騰するなど乱高下。日銀が30日に公表した当座預金増減要因の予想値は、日本の通貨当局が5兆5000億円規模の為替介入を行った可能性を示唆した。その後1日のニューヨーク市場でも介入が実施されたとの観測が出ている。
29日の為替介入は5.5兆円規模の可能性、日銀当座預金見通しが示唆
足元では155円台後半で推移しており、再度介入が行われる可能性があるほか、円は購買力平価に基づく水準より30%以上安く取引されており、中長期的には円高方向に反発するリスクもある。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの日本担当チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)、新原謙介氏は、現在のドル円相場は、金利差に注目した取引からドルが割高になり、その対極に円がある、とした上で、「2年後まで見通すと、ドル安になっている可能性は高い」との展望を示した。