日本のIT株に再評価機運、荒れる円に耐性-デジタル投資も追い風
(ブルームバーグ): 円相場の乱高下が日本株のかく乱要因となる中、為替リスクに耐性があるとしてIT(情報技術)関連株を再評価する機運が広がっている。事業が国内中心のため、為替変動の影響を受けにくいほか、デジタル投資の拡大で需要見通しも明るいとの見立てからだ。
長期にわたる経済成長の低迷で、日本の企業や自治体がIT投資に消極的な時代が続いた。大和総研経済調査部の末吉孝行シニアエコノミストによると、日本のソフトウエア支出は特に非製造業で停滞が目立ち、2020年までの20年間で1.5倍にしか伸びなかった。同期間に米国で4倍以上、フランスで3倍程度増えたのとは対照的だ。
しかし、少子高齢化で労働人口の激減が見込まれる日本では、生産性向上のためのデジタル投資は至上命題だ。新型コロナウイルスの流行をきっかけに公共部門のオンライン化需要も高まったため、最近はIT投資が急速に拡大。日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)によれば、全産業のソフトウエア投資額は23年度に11%増、24年度も6.6%増と予想されている。
ソフトウエア投資の増勢は富士通やNEC、NTTデータグループといったITサービス企業の事業環境には追い風だ。また、日本でも進むインフレを受け、企業や地方自治体にもデジタル投資を前倒しで推進する圧力がかかる。大和総研の調べでは、日本の設備投資に占めるソフトウエア投資の比率は20年ごろまでは10%以下で推移していたが、足元は15%程度まで上昇した。
シュローダー・インベストメント・マネジメントの日本株式運用総責任者、豊田一弘氏は「システムインテグレーターは収入のほとんどを日本で得ている」と指摘した上で、「円高になれば、堅調な収益を背景に魅力的な銘柄になる可能性が高い」との見方を示す。
ブルームバーグのデータによると、ITベンダーのSCSK、大塚商会などは国内売り上げ比率がほぼ100%。大手の富士通やNECでも国内比率は高めで、TOPIX100の同比率50%を大きく上回る。