再び低迷する「月9」視聴率…フジテレビの「恋愛ドラマ全盛期」はとっくに昔に過ぎていた
“「月9」=恋愛ドラマ”でブランディング
復調して安定した人気を誇っていた「月9」が再び低迷期に突入――どうしてこうなってしまったのでしょうか。 【写真】裏切り者、痛々しい「人気ガタ落ち」だったキムタクが「大復活」を遂げた理由 月曜21時に放送しているフジテレビの看板ドラマ枠「月9」。 1990年代に『東京ラブストーリー』(1991年)や『ロングバケーション』(1996年)など、社会現象化するほどの恋愛ドラマを生み出し、2000年代にも『やまとなでしこ』(2000年)を大ヒットさせ、“「月9」=恋愛ドラマ”のイメージを浸透させてブランディングに成功していました。 そんな「月9」が現在、二度目の低迷期を迎えてしまっているのです。 そこで今回は、年間・約100本寄稿するドラマ批評コラム連載を持つ筆者が、栄枯盛衰の「月9」ヒストリーを振り返っていきます。 なお、本稿では視聴率(世帯平均視聴率/関東地区)の推移をベースに分析していきます。 現在は個人視聴率が重視されていること、また、そもそも見逃し配信での視聴スタイルも定着しており、もはや視聴率が絶対的指標ではないことは重々承知のうえですが、推移や比較のわかりやすさを優先し、90年代から同一基準で調査されている世帯平均視聴率を参照していきます。
「月9」が低迷していると断言できる理由
まず、現在の「月9」が低迷していると言わざるを得ない理由を説明しておきましょう。 昨年7月期『真夏のシンデレラ』が、全話平均の視聴率で「月9」史上最低となる5.7%を記録してしまい、さらにその次クールの昨年10月期『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』が、全話平均で視聴率5.3%とさらにワーストを更新するという憂き目に遭っていたからです。 いまはリアルタイム視聴を計測する視聴率というデータだけで、作品のよし悪しを決める時代ではなく、実際に視聴率はよくなくても見逃し配信で記録的再生数を叩き出して、大ヒットと評されるドラマもあります。 ただ、一方で作品を放送時間に観る習慣があるドラマファンもいまだに多くいるわけで、唯一無二の絶対的指標ではないにしても、視聴率がドラマ人気を推し量る際に有効なデータのひとつであることも事実なのです。 また、『真夏のシンデレラ』と『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』は見逃し配信が好調だったとも言い難く、SNSなどで酷評するドラマファンが非常に多かったことから、現在の「月9」凋落を象徴する2作品と言って差支えないはず。 ここで歴代「月9」作品の全話平均視聴率トップ10を振り返っておきましょう。 ---------- 【1位】34.3%/『HERO』(2001年) 主演:木村拓哉 【2位】30.8%/『ラブ ジェネレーション』(1997年) 主演:木村拓哉・松たか子 【3位】29.5%/『ロングバケーション』(1996年) 主演:木村拓哉・山口智子 【4位】28.2%/『ひとつ屋根の下』(1993年) 主演:江口洋介 【5位】27.0%/『あすなろ白書』(1993年) 主演:石田ひかり・筒井道隆 【5位】27.0%/『ひとつ屋根の下2』(1997年) 主演:江口洋介 【7位】26.4%/『素顔のままで』(1992年) 主演:安田成美・中森明菜 【7位】26.4%/『やまとなでしこ』(2000年) 主演:松嶋菜々子 【9位】26.0%/『教師びんびん物語2』(1989年) 主演:田原俊彦 【10位】25.1%/『プライド』(2004年) 主演:木村拓哉 ---------- ちなみに惜しくもトップ10には入れませんでしたが、1990年代には『東京ラブストーリー』(1991年)、『101回目のプロポーズ』(1991年)、『ビーチボーイズ』(1997年)といった不朽の名作もあったのです。 月9の全盛期は1990年代から2000年代前半だったのは一目瞭然です。 後編『月9は「キムタク」に頼り過ぎていた…恋愛ドラマで復活したいフジテレビの思惑』では、月9の視聴率が低迷していった経緯を詳しく見ていきます。
堺屋 大地(恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー)