【只見線全線再開通2年 地方創生の針路】(上) 知名度、今や全国区 知恵絞り官民で誘客 福島県
JR只見線は全線再開通から10月1日で2年を迎える。沿線地域で人口減少、高齢化が進む中、只見線は地域の暮らしや観光産業を支えている。政府が政策として地方創生を打ち出してから10年。「日本一の地方創生路線」を目指す只見線の存在感は増し、国内外から注目を集める。地方交通線の展望と課題を探る。(2面に関連論説) 週末になると、多くの観光客が福島県只見町のJR只見駅に降り立つ。28日午後2時30分過ぎ、乗客の1人は夏の名残を感じさせる山あいの美しい風景に感嘆の声を漏らした。 JR只見線が2022(令和4)年10月1日に全線再開通してから間もなく2年。只見駅前にある只見町インフォメーションセンターには全国各地から列車運行への問い合わせが相次ぐ。スタッフの吉津てるみさん(65)は「これまで少なかった九州や四国など西日本からの問い合わせが増えている。只見線の知名度が全国区になってきた」と感じる。背景の一つと考えられるのが映画の効果だ。町の風景や只見線が登場する日台合作映画「青春18×2 君へと続く道」が3月に公開され、アジアで大ヒットした。反響は今も続く。町はロケ地マップやのぼり旗などを設置している。駅舎での記念撮影などの「聖地巡礼」をする人は少なくない。
訪日客も絶えない。特に台湾からの観光客は以前に増して好調だ。路線の撮影スポットとして知られる三島町の只見川第一橋りょうビューポイント。隣接する「道の駅尾瀬街道みしま宿」の駅長の布川孝宏さん(43)によると、訪日客の6、7割は台湾人。観光バスで訪れ、只見線の一部区間を利用するのだという。 臨時列車の運行なども奏功し、利用者は着実に増えている。JR東日本が7月に公表した2023(令和5)年度の1日平均乗客数は、運行を再開した会津川口(金山町)―只見駅(只見町)間が103人で、県や沿線自治体でつくる協議会が利活用計画で示した「2027年度に1日平均100人」とする目標を4年前倒しで達成した。 沿線地域では一層の誘客や満足度向上に向けた新規事業が進む。柳津町に会津柳津駅舎情報発信交流施設がオープンし、只見町は日台合作映画にちなんで会津塩沢駅舎をアートで彩った。県などを中心にオリジナル観光列車の導入に向けた検討も始動した。官民がともに知恵を絞る。