起立性調節障害に睡眠医療を―思春期の「朝起きられない」問題、薬で改善の可能性
◇思春期に遅起きになる理由
思春期ごろに就寝・起床時刻が遅くなることは多くの人が経験しているのではないだろうか。 研究によると、小学校から中学校にかけて成育に伴い睡眠時間が減少し、就寝時刻も遅くなっていく。第二次性徴とともに睡眠時間が長くなる場合があるものの、その伸び方は個人差が大きい。一方で就寝時刻は成長とともにさらに遅くなるため、結果的に起床時刻は遅くなる。加えて、就寝の2~3時間前には「睡眠禁止ゾーン」と呼ばれる覚醒度の高い時間帯があり仕事や勉強がはかどりやすいのだが、勢いに任せていると容易に夜更かしができてしまう(図参照)。そして、その反動で起床時刻も遅くなってしまうことになる。 DSPSと起立性調節障害は概念としては別の疾患である。一方は睡眠・覚醒、もう一方は血圧の問題が主ではあるものの、相互に併存しているケースは非常に多くみられる。「両方合わせて『若年性起床困難症』という病名を考慮してもよいのではないかと考えています。血圧も睡眠も脳の視床下部という領域でコントロールされています。その領域の機能不全というか、体の発育の部位による“時差”が症状の背景にあるのではないかと思います」と、神林教授は言う。 <睡眠医療の観点から推奨される治療薬> 早寝対策:メラトニン(メラトベル)1~2mgを眠前に(15才以下) レンボレキサント(デエビゴ)2.5~5mgを眠前か不眠時頓用に 早起き対策:アリピプラゾール(エビリファイ)を0.5mg(体重60kg未満)、1mg(同60kg以上)朝か昼に
◇受診する医療機関の探し方
思春期の睡眠問題で生活や学業に支障が出ている場合、どのような医療機関を受診すればよいのだろうか。 起立性調節障害が疑われる場合、小児科を受診するケースが多いという。起立性調節障害を専門にしているクリニックなどもあるが、いずれも睡眠医療の観点からの治療はほとんどまだ浸透していないという。 「血圧の問題があっても、適切な時刻に起きて服薬できなければ治療に支障をきたします。受診先を探す場合、日本睡眠学会のウェブサイト(https://jssr.jp/list)に『認定専門医療機関』の一覧が掲載されています。そのうち『機関A』の施設を受診してください」と神林教授はアドバイスする。