資格を取ったのに収入減――「リカレント教育」の悲喜こもごも #人生100年 #令和のカネ
昇進に異動、有効な学び直しはキャリアの中にある
ならば有効な「学び直し」とはなんだろうか。オンライン経済メディアNewsPicks編集長で『仕事2.0』や『資格を取ると貧乏になります』などの著書がある佐藤留美氏は「“将来が不安だから資格を取ろう”という考えは学び直しの本質からずれています。わざわざ資格を取ったりするまでもなく、キャリアを積んでいく上で学び直しは絶えず必要になります」と指摘する。 「資格がないと就けない仕事を除いて、資格は取得しただけではあまり意味がないと思います。結局、エンジニアだろうと士業だろうと自分の技能を、お客さんがお金を払ってくれる価値に変えられるかどうかが評価の基準です。それなら定年後の安全のために資格の勉強をするよりも、今の仕事の変化に目を向けたほうが将来のためになると思います」 スマホの登場やコロナ禍など、外部環境の変化が働き方や仕事内容に大きく影響を及ぼす局面は21世紀に入ってからだけでも複数あった。最近でも、ChatGPTなど生成AIの登場と普及が既存の職業や仕事に大きな影響を与えると見られている。
「例えば、ウェブメディアの編集者という仕事は以前であれば、締め切りまでにコンテンツを納品して公開するだけでよかった。ですが、今では、編集者はテキストだけでなく動画コンテンツを企画したり、自ら出演したりすることが当たり前になりつつあります。さらに講演もこなすことができて、個人の名も立てられたらベスト。もはや総合プロデュース業になりつつあります。テキスト記事を書くだけならChatGPTに取って代わられる日も近いかもしれません」 入社して約7年間、編集職としてNewsPicksで働いてきた佐藤氏だが、編集畑を離れ、まったく異なる部署に異動になり、執行役員になったことで多くの「学び直し」の必要性に直面した。異動先では、それまで自分が「共通語」だと思っていた編集の世界の「常識」がまったく通用しなかったのだ。