資格を取ったのに収入減――「リカレント教育」の悲喜こもごも #人生100年 #令和のカネ
「ヒヨコ食い」に「ダブルライセンス誘導」…巧妙化する資格ビジネス
「二渡さんのような事例はずいぶん昔からあります。今は少しだけ下火になりましたが、今も存在しているのは間違いありません」 そう指摘するのは『資格ビジネスに騙されないために読む本』などの著書もある現役社労士の須田美貴氏だ。
過去に資格予備校の講師の経験も持つ須田氏は「資格ビジネス」の一面をこう語る。 「資格合格者に対して、『合格後の実務はこうなっている』『すぐに稼げるようになるには』という講座を売り込むのは“ヒヨコ食い”と言われています。合格して間もない右も左もわからないヒヨコに『最速独立』や『年収1000万』などの夢を見せて開業講座を売り込むんです。でもよく考えてほしいのは、その講座を受け持つ講師は食えてないからそこに立っているわけで……」 資格取得後に食い扶持を稼げない人には「ダブルライセンス・トリプルライセンス」への誘導もあるという。先述の二渡さんの例で言えば、社労士は中小企業診断士やファイナンシャルプランナー(FP)と相性がよく、追加の取得でさらに稼げるようになる、という甘言だ。須田氏は続ける。 「真顔で『次は、なんの資格を取ればいいですか?』と聞いてくる人もいます。気づけば資格マニアになってしまい、資格学校に10年居座るなんていうこともあるので注意が必要です。予備校側もずっと来てくれるお客さんを見抜くのがうまいんですよ。例えば、真面目だけれど自信がなさそうな人。事務職の出身で、営業力には不安がある。そんな人に絞って資格沼に誘導していくんです」 さらに昨今は、「副業士業」なるワードを打ち出した資格ビジネスも台頭してきている。 「“副業”というバズワードに士業をかけあわせるのが最近の資格ビジネスのトレンドです。土日だけ行政書士として活躍して“週末士業”で老後の安定をつかみ取ろう、と。明らかに40~50代を狙い撃ちにしています。誰が週末に行政書士のところに行くかは疑問ですが…」 集客に窮した結果、「フランチャイズ士業」という落とし穴にハマるケースも。 「要するに大手の事務所の名義貸しです。食えないから手っ取り早く大手の看板を借りて集客しようとするんです。見かけは独立して法人化した大きな事務所のように見えますが、実態は一般的なフランチャイズで売り上げが保証されるわけじゃない。その上、法人税はかかるし、業界団体への会費や税金とか保険料も自分で全部やらないといけない」 せっかく苦労して資格を取得しても、それだけでは食えない。 「サラリーマン生活から自由になるべく独立したのに、気づけばサラリーマン時代よりも隷属を強いられる、なんていうことにも陥っています」