被災地「選挙どころじゃ」 衆院選表明受け石川県内自治体 投票所、人手確保に困惑
●遠方避難者へ周知どうする 自民党の石破茂総裁が10月15日公示、同27日投開票で衆院選を実施すると表明したことを受け、震災や豪雨に見舞われた能登の被災地で「選挙どころじゃない」と困惑の声が上がっている。避難所となっている集会所や公民館は投票所として使用できない恐れがあり、自治体職員が災害対応に奔走する中、選挙事務をこなす人手の確保も難しい。住民票を残したまま遠方へ避難した有権者への周知など課題は山積している。 「輪島だけ国政選挙をしないわけにはいかない。厳しいが、失敗しないように乗り越えるしかない」。豪雨対応に追われる輪島市の担当者は自らに言い聞かせるようにつぶやいた。 市は選挙の際、仮設住宅と期日前投票所を行き来するバスを運行しようしていたが、豪雨による土砂崩れで道路の通行止めが相次ぎ、今回の衆院選で対応するのは難しい状況だ。 ●投票終了時刻前倒しを調整 輪島市選管 高齢者が土砂や流木が残る道路を夜間に歩いてけがをする恐れがあるため、市選管は午後8時の投票終了時刻を前倒しができないか県選管と調整している。開票所に使っている一本松総合運動公園体育館は地震で破損し使えないため、別の体育館に変更する予定だ。 珠洲市選管は、避難所となっている小中学校での投票所開設や、長期避難指示区域の取り扱い、住民票を珠洲に置いたまま市外に避難している有権者への周知方法などを急ぎ検討する予定だ。選管の担当者は「大変なことになった」とため息を漏らした。 能登町選管の担当者も「従来の場所が投票所に使えるかや、避難者がいる中での入場券の郵送など思い付くだけでも課題は山積。とても人手が足りない」と嘆いた。 ●七尾でダブル選、金沢マラソンも 七尾市は既に10月20日告示、27日投開票で市長選が決まっていた。地震対応や市長選に加え、衆院選の対応にも追われることになり、市選管の担当者は「限られた人員でやりくりするしかない。ミスがないように粛々と準備を進めるだけだ」と気を引き締めた。 「衆院選と市長選のダブル選の方が負担が少ない」と歓迎の声も漏れる。ただ、終わりの見えない復旧対応の中、30代の職員は「震災と市長選でも大変なのに…」と疲労をにじませた。 金沢市では2021年の前回選に続き、投開票日と金沢マラソンの開催日が重なった。市選管は前回と同様に職員に加え、会計年度任用職員も動員する。担当者は「ひょっとしたらと思って、事前に金沢マラソン組織委員会と調整を進めていた。前回の経験を生かしたい」と話した。