起業家が講師の高専など…全国から注目を集める徳島・神山町の「ユニークな教育」[FRaU]
全国から人が集まるまちがあります。これまでにない暮らしのスタイルやユニークな取り組みで「ここに住んでみたい!」という人が急増中。人気の秘密を探りに、いま注目されているまち、徳島県神山町を訪ねました。 “限界集落”のひとつである徳島県神山町(かみやまちょう)に、革新的な教育システムを携えた高専や、独自の理念を持つオルタナティブスクールが誕生。神山で花開くユニークな教育とは。
神山にある学びの多様な選択肢
徳島県の山あいに神山町というまちがある。農林業を基盤とするのどかな土地だが、近年、ユニークな教育という視点で全国から注目を浴びている。
もともと徳島県には、人や自然との関わりを通して学ぶ自由な学校「NPO法人自然スクールトエック」が30年以上前からあり、数年前には神山町の農業高校がまちぐるみで食・農・環境に注力したカリキュラムに改革するなど、「次世代を育てるためには教育環境を充実させなくては」という意識が高かった。そして一昨年、大きな話題となったのが、社会に変化を与えられるような学生の育成を目標としている「神山まるごと高専」の開校だ。
高専という言葉を聞き慣れない人もいるかもしれない。教員免許を持った教師が、社会に出る前の一般的な教育を行う高校とは異なり、博士号を持った専門家の教員が技術者になるための実習を含む専門教育を行うのが高専。
修業年限は5年であり、一般教育と専門教育を一貫して学ぶ。3年次修了者には大学入試資格が認められており、卒業後は就職する率が高いが、大学編入者も多い。
「神山まるごと高専」が革新的なのは、テクノロジーとデザイン、起業家精神を基軸にした教育方針にある。専門知識は実践につなげる力や世の中に受け入れてもらう力があってこそ生きるからと、理系だけでなく、文系やデザインコミュニケーションにおいても複合的なカリキュラムを組んでいる。また創業メンバーの4人がビジネスの最前線にいる現役の起業家であり、特別講師には起業家講師と呼ばれる、あらゆる職種の「社会にまだない価値を生む人たち」が続々と登場する。