【「化粧品容器製造」好調要因を聞く】グラセル 谷村敏昭会長「『容器の選択肢』の拡大に貢献」
トータル3000型以上という圧倒的な品ぞろえで「化粧品容器のデパート」とも言われるグラセルは、業績が引き続き好調だ。2024年3月期の売上高が過去最高を記録。2024年4‐9月期(中間期)の売上高も引き続き好調だったとしている。同社が出資するBEAUTYCLE(ビューティクル)が展開している、化粧品容器の水平型リサイクルの取り組みが注目を集め、新規案件の受注が増えているという。近年は、韓国製をはじめ海外製の容器の提案にも注力。クライアントの、容器の選択肢の拡大に貢献している。同社の谷村敏昭会長に話を聞いた。 ――直近の業績について教えてください。 2024年3月期は過去最高の売り上げを達成しましたが、2024年4‐9月期も引き続き好調でした。2025年3月期は前期比で5%近くの増収を達成できるのではないかとみています。 ――好調が続く要因について教えてください。 大きな要因としては、化粧品・トイレタリー容器の水平型リサイクルを行う新会社ビューティクルを、ツバキスタイルと協働で立ち上げたことがあります。ビューティクルが2023年5月に竣工したリサイクル工場「BEAUTYCLE佐賀工場」では、PET、PE、PPなどの容器について、回収→洗浄→粉砕→樹脂化→容器製造を一貫して行うことができます。化粧品やトイレタリーの容器を中心に、使用済みのプラスチック容器を回収し、新品のボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」の取り組みを行っています。化粧品・トイレタリー容器の「ボトルtoボトル」の試みは、日本初です。 こうした、ビューティクルの水平型リサイクルの取り組みに関心を持っていただき、顧客企業から大きなお仕事を任せていただけたことが増収につながりました。ビューティクルに関心を持っていただいたことが、別の容器の受注につながるといったケースもありました。これまでご縁がなかった企業の方から、「ビューティクルについて話を聞きたい」「工場を見学したい」などとお声掛けをいただけるケースもあります。加えて、営業社員一人一人の努力もあり、案件の受注へと着実につながっています。 ――今後の化粧品容器市場について、どのように見ていますか? 人口の減少は避けられませんから、国内市場の縮小にもつながってくると見ています。その中で業績を伸ばしていくためには、メード・イン・ジャパンの容器だけでなく、海外製の容器も扱っていかなくてはいけないと感じています。海外製容器の中には、日本製にない、新しい発想のデザインのものもあります。価格競争力の面で非常に優れたものもあります。国内外の容器を取りそろえることで、クライアントに、さらに多様な選択肢を提示できるようにしていきたいです。 ただ、海外製容器の場合、国内の通常の容器の品質基準とは、異なるケースもあります。当社でも上海に検品工場を設置するなど、品質の向上には務めています。最終的には、容器の品質についての正確な情報をお客さまにお伝えし、選んでいただくしかないと考えています。 いずれにせよ、営業マンの営業力だけで商品を買ってくれるほど、甘い時代ではありません。魅力ある製品づくりを続けていくことが大切です。商品力や営業力などそれぞれの力を高め、総合力で勝負していかなければならないと感じています。 ――最新の提案容器についても教えてください。 「ISUW―R」には新技術を採用しています。肉厚のインジェクションブローのPET容器なのですが、内側に、横線や市松柄などの立体的な模様を入れる技術を確立しました。以前から、ダイレクトブロー容器に同様の模様をつける技術はあったのですが、インジェクションストレッチブロー容器でできるようになったのが大きな特徴です。グラセルの独自技術で、特許も出願中です。 内側にオリジナルデザインの模様をつけることもできます。内側にデザインをするだけですから、外側の印刷には影響しません。 ――模様ごとに違う金型が必要なのですか? 必要ありません。模様によって見え方が大きく変わりますから、差別化・高付加価値化が可能で、高級感を演出できます。現在はまず、トイレタリー向け容器でこの技術を採用しましたが、シリーズ化し、今後は美容液向け容器などへも、この技術の展開をしていきたいと考えています。こうした特徴のある容器ならば、海外市場でも戦っていけるでしょう。 ――他にも注目の新容器はありますか? トイレタリー向け容器として、「ESPOIR(エスポワール)」「POMME」も開発中です。トイレタリー向け容器は、32φ(ファイ)という口径のポンプがついているのが一般的ですが、両容器には28φという小さめの口径のポンプを採用しています。そのため、見た目が重くならず、すっきりとした印象にすることができています。こちらのポンプもボトルに合わせて2種類開発中です。1プッシュの吐出量も、シャンプー用ポンプで一般的な3ccよりも少ない2ccに抑えています。 アイスクリーム容器のようなデザインの、PPのクリームジャー容器「GELATO(ジェラート)」や、滑らかなお椀のようなデザインのPETのクリームジャー容器「OWAN(オワン)」も現在開発中です。 ――今後のグラセルの展開についてより詳しく教えてください。 今後は、ビューティクルの行う、化粧品容器の水平型リサイクルの提案も、さらに強化していきたいです。樹脂容器のリサイクルのニーズは今後さらに高まっていくとみています。上場企業なども含め、リサイクルに対する対応状況が、より強く問われるようになってきています。そうした中、ビューティクルの水平型リサイクルが、多くの顧客企業に貢献できると考えています。 ――容器業界の課題として感じることはありますか? 化粧品の容器製造・加工メーカーにおける人材不足は、業界の成長においてボトルネックになると懸念しています。工場での労働を希望してくれる日本人は少なくなっており、外国人に頼らざるをえない状況になってきています。 当社では2015年に、タイに現地法人グラセルタイランドを設立、現地工場での容器の製造を行ってきました。製造工程の効率化にも取り組んできており、着実に成果が生まれています。グラセルタイランドの活用も今後ますます進めていきたいと考えています。
日本ネット経済新聞