東京から引っ越したら保育料が激増! 子育て施策で自治体は税収格差とどう闘うか
▽横浜市の狙いはゆとり創出 では税収に頼らず、自治体にできることは何か。自身も横浜市で子育てをしてきた当事者だという山中氏は、次のように強調する。 「横浜市では毎年2万2千人の子どもが生まれます。0歳から中学3年までだと46万人になります。私は、横浜が日本最大の子育て支援都市になるべきだと思っています。独自にできる事はたくさんあります。子育て世帯の『時間的なゆとり』を作れるのは、市民に最も近い存在の基礎自治体です」 例えば独自の取り組みとして、横浜市では、今年から小学校の夏休み期間に市内全ての学童クラブで昼食提供を開始した。市の指定した事業者のウェブサイトから保護者が注文し、一食400円で弁当が直接クラブに届く仕組み。給食が出ない夏休み期間に保護者を悩ませた、毎日の弁当作りという問題を解決した。来年度からは春休みや冬休み期間の実施も検討している。 また、保育園の登園時におむつの持参が不要になる「サブスクリプション」と呼ばれる定額制サービスの導入も促進する。0~2歳児を受け入れている市内約1200の保育施設で、2024年度からおむつのサブスク利用者に月500円の補助を出している。その狙いは、保護者が毎日大量のおむつに子どもの名前を書いて持っていく時間と手間の解消だ。
▽スマホで新たな子育てツール 加えて、横浜市が特に力を入れているのが、7月に開始した子育てサイトの「パマトコ」だ。子育てに関する便利情報と行政手続きのオンライン申請を集約した総合サイトで、10月にアプリもリリースする。マイナンバーの認証機能を使い、出産費用の一時金や小児医療証の発行など、区役所に行かなくても申請ができるようになった。 山中氏はサイトの魅力として、市内で開かれているイベントを集約したページや、外出時に使える授乳室やオムツ交換台などの検索機能をアピールする。「私も経験がありますが、外出していてオムツの取り換えが必要になった際、どこでできるかってことを知りたい訳ですよ。役所からの情報提供は見落とされがちですが、スマートフォンを通じたコミュニケーションの方が、今の子育て世代にはなじむ」 次に取り組みたいのは、保育園の一時預かりサービスの拡充だという。「自分自身も、両親が近くに住んでいない状況で子育てして、ニーズは高いが使いにくいと感じている。他にも、習い事への送迎など、さまざまな子育てに関するニーズがある。きちんとくみ取って対応していきたい」と語る。
子育てサイト「パマトコ」でも、利用者からの意見を随時募っている。リリースから約3カ月で300件以上の声が寄せられた。担当課長の永松弘至さん(47)は、将来像をこう語る。 「もちろん予算には限りがあるが、デジタル化を進めることで事務作業が減り、歳出削減にもつながる。その分をまた新しい事業として市民の皆さまにお返ししたい」