小さなアルミ板を直角に曲げられる 3750円の「ポケットベンダー」愛用してます
小さな部品を金属板で作ろうとすると、それなりの加工精度が必要となり、歪みが無視できませんが、そんな小さな金属板の曲げ加工をするのに便利な工具が、エンジニアの「TV-40 ポケットベンダー」です。 【もっと写真を見る】
柔らかくて加工しやすく、コスト面や入手性でも優れていることから、工作では木材やプラスチック類を使いがち。しかし、強度の面では金属のほうが高く、全部は無理でも、せめて一部だけでも金属を使いたい、と思うシーンは多々あります。 とくに、直角に曲げた金属板の強度は高く、ケースに使えば曲げや捻じれ、押しつぶしに強くなります。また、フレーム部分だけでも金属板が使えれば、全体の剛性を高めやすいでしょう。 とはいえ、加工のハードルは高め。比較的加工しやすいアルミの薄板でも、手で曲げようとすればどうしても角が出ず、歪な形になってしまいます。万力(バイス)で挟んでハンマーで叩けば多少はマシになりますが、叩き跡が残る、波打ってしまうなど、見た目が犠牲になりがちです。 とくに、小さな部品を金属板で作ろうとすると、それなりの加工精度が必要となり、歪みが無視できません。 そんな比較的小さい金属板の曲げ加工をするのに便利な工具が、私が愛用するエンジニアの「TV-40 ポケットベンダー」(実売価格3750円)です。 2つのバイスで挟んで折り曲げる この製品は、ヘラのような形をした2つのバイスが入っているだけという、シンプルなセット。各バイスの先にはブレードがあり、これで金属板を挟んで曲げるという仕組みです。 ネジが4本あり、先端側の2本がブレードの固定用、後ろの2本が厚み調整用。ブレードが本体と平行になるよう挟まないと、ブレードやネジに無理な力がかかり、ネジが曲がる、ブレードが歪むといった原因になってしまうので、注意が必要です。もちろん、金属板がキレイに曲げられない可能性も高くなります。 イメージ的には、ブレードと本体を平行にするというより、金属板をブレードの面全体で押さえる、といった感じでしょうか。なお、ネジはガチガチに締め上げる必要はなく、動かない程度の仮止めくらいの力で十分です。 両方のバイスをセットしたら、準備完了。あとはバイスをつかみ、折るように90度曲げるだけです。 金属板は曲げに対してある程度反発するため、ピッタリ90度まで折り曲げても、直角になりません。これを見越し、先端のカットが90度ではなく、84度と少し鋭角になっています。 これにより、多少戻りがあっても直角になるように考えられているのがうれしいですね。 もちろん、素材の違いや厚みによって多少変わってくるため、曲げ過ぎたら少し戻してから外せばOKです。なお、キッチリ合わせたければ、分度器やスコヤなどで角度を確認しましょう。 コの字や段曲げなどもできる! TV-40が便利なのは、L字の曲げだけでなく、コの字や段曲げにも対応できること。ブレード中央の幅が約12mmと狭くなっているので、これ以上の幅があれば複数回の折り曲げが可能です。 コの字に曲げるには、L字に曲げた部分をまたぐようにセットし、ブレードで曲げ位置を合わせます。あとはL字の時と同じように、両手で持って90度に曲げるだけです。 段曲げの場合は最後に曲げる方向が逆になるので、バイスを裏返しに取り付ける点が異なります。 ちなみにTV-40で曲げられるのは、アルミ板なら1.5mm厚以下で、強度のあるA5052だと幅30mmまで、純アルミ板のA1000系なら幅50mmまでです。このほか、銅板や真鍮板だと1.0mm厚以下で、幅50mmまでという制限があります。 他の金属でも薄手のものなら曲げられそうですが、スチールのように硬く戻る力が強いものだと、もっと強い力で曲げられる工具が必要となるでしょう。あくまで、アルミか銅、真鍮用だと思ったほうが良さそうです。 なお、樹脂はそのまま曲げると折れてしまいます。ヒートガンなどで加熱しながらであれば曲げられそうなので、チャレンジしてみても良いかもしれないですね。この場合、加熱のし過ぎで変形しないよう気を付けないといけませんが。 小物のちょっとした加工に便利 幅が50mmまでという制限があるため、大きな金属板の加工はまず無理。しかし、L字で補強を入れたい、フレームをアルミで作りたい、部品の固定具を作りたいなど、一部を金属化したい場合には十分です。 ちょっとした曲げ加工が自分でできると、ピッタリサイズの部品が作れるため、工作の完成度がより高まります。 金属板を曲げるのはハードルが高いと感じているなら、まずはこのTV-40から試してみるのはいかがでしょうか。意外と簡単に曲げ加工ができるとわかれば、工作の幅が広がるかもしれませんよ。 ●お気に入りポイント● ・1.5mm厚までのアルミ板が加工できる ・補強や固定用の金属パーツが自作可能 ・実売3750円と手を出しやすい この記事を書いた人──宮里圭介 PC系全般を扱うフリーランスライター。リムーバブルメディアの収集に凝っている。工作が好きだが、最近あまり時間が取れないのが悩み。 文● 宮里圭介 編集●こーのス