「勝ちを諦めているんじゃないか」憧れ抱き競輪界に飛び込んだ高木佑真がデビュー後に味わった葛藤 / アニメ『リンカイ!』コラボインタビュー
ーープロデビュー後の選手生活は順調でしたか、それとも苦戦しましたか? デビューして1年半ごろから、先行してもバックが取れないレースが続いた時期がありました。自分が勝てる戦法は先行だと思っていたけど、やりたい戦法にこだわって勝ちを諦めているんじゃないか。自分が勝つために走っているのかどうかわからなくなっちゃって。 養成所の頃は“賭けの対象”じゃないから自分のペースで力をつけていけばいいですけど、プロになったらお客さんが賭けてくれるからそういうわけにはいかない。ガールズケイリンのお客さんって本気で応援してくれる方がすごく多いので、「自分は逃げ切れる」って本気で思えないことが申し訳なかった。 それで、ちょっと自在に転向したんです。でも「最後だけ、直線で伸びる競走をして1着を取って、喜んでくれる人はいるのかな」って思ったり、自在で大きな着を取ったときに「やっぱり自力でいけばよかった」と強く感じたりして、また自力に戻りました。それから調子が上がってきて、練習もうまくいって、自信がついたのか成績も良くなり、2年目に完全優勝できました。
◆高木隆弘選手との出会い
ーー2023年から、ガールズグランプリを優勝した元選手の高木真備さんと同じ、高木隆弘選手に師事するようになったと聞いています。どういった経緯で練習を見てもらうことになったんですか。 ホームバンクの川崎競輪場が補修工事で使えなくなって平塚競輪場にお邪魔すると、そこに高木さんがいらっしゃいました。高木さんは以前から、開催が一緒になった時にアドバイスをくださっていたんです。 その頃は、ルーティンのように毎日練習をこなすだけになっていました。成績が上がっていれば自分を信じて練習を続けられるけど、このままでいいのか悩んでいて。自分の中で何か変えたい、いろんなことをやっていきたいと思っていた時に、高木さんから声を掛けてくださり、二つ返事でお願いしてバイクを引っ張ってもらいました。その後、「明日も来るからやるか」と聞いてくださって、今に至ります。 高木さんのメニューは練習量が多く根性論なタイプと知っていたのですが、わたしはそういうやり方に食らいついていくのが得意だから相性がいいのかなと思っていました。実際に練習を見ていただくようになり、日に日に成長していると実感しています! ーー成長を実感できるのは嬉しいですね。 高木さんのアドバイスはすごく的確なんです! これまではレースの敗因を気持ちの弱さだと片づけていました。でも高木さんは気持ちの問題だけじゃないと、「良いタイミングで仕掛けられなかったのはそれまでに脚を使ってしまっていたからで、無駄な脚を使わないようにするには……」みたいに、わかりやすく教えてくれます。 それまではトップスピードが足りないとか、スピードの持久力が足りないとか、大まかな原因はわかるけど、何を変えたら良くなっていくのかまで考えられてなかった。でも、高木さんに師事するようになって解像度があがりました。次の課題が具体的に見えてくるから練習も充実して、毎日がすごく楽しくなりました。 高木さんは私に「ビッグレース獲れるよ」って言うんですよ。ちょっと頑張れば絶対獲れるからって。デビューしたての時はグランプリ絶対獲る! って本気で思ってたんですけど、途中から「自分なんかがグランプリなんて言えないな」と思っちゃって。でも、論理的な高木さんがこうやって言ってくださるから、自分も信じられる。一緒に練習していただいてなおさら強く思えるようになりました。