大久保嘉人の提言「日本代表は泥臭くあれ」
南アW杯では開き直って戦った
プライドを捨て去り、泥臭く戦って結果を出したという自負がある。 3年前のW杯南アフリカ大会。開幕を4か月後に控えた2月の東アジア選手権からチームは低空飛行を続け、韓国代表を埼玉スタジアムに招いた壮行試合では0対2と惨敗。日本を発ってからもイングランド代表、コートジボワール代表とのテストマッチに連敗したことで、チームにターニングポイントが訪れた。 「あのときは、本番直前にみんなが開き直ったことも大きかった。オレたちは弱いんだ、ってね。それがあったから、泥臭さといったものが出てきたんだと思う」 コンディション不良だった大黒柱のMF中村俊輔(横浜F・マリノス)に見切りをつけ、ワントップに本田圭佑(CSKAモスクワ)、アンカーに阿部勇樹(浦和レッズ)を置く「4‐1‐4‐1」システムへの変更は見事に奏功。日本は下馬評を覆して、2大会ぶりとなるベスト16進出を果たした。 堅守速攻スタイルの生命線となったのは、中盤の「4」の両サイドだった。左の大久保と右の松井大輔(当時グルノーブル)が自陣で体を張って相手の攻撃を防ぎ、マイボールになるや長い距離を駆け上がって最前線の本田をサポート。ボールを失うと、再び全力で自陣に戻った。 全4試合を通じて、松井とともにフル出場は一度もなかった。泥臭さを体現するために、キックオフから後先を考えずにエンジン全開で暴れ回った末の途中交代は大久保の「勲章」でもある。
本田をもっと見習うべき
だからこそ、5大会連続のW杯切符を獲得した、アルベルト・ザッケローニ監督に率いられるいま現在のチームに一抹の物足りなさを感じている。 「いまはピッチ上で(仲間に対して)怒鳴ったりするのが(本田)圭祐くらいしかおらんでしょう。言い合いみたいなものがないと、一人ひとりが自分に対して責任感を持つことなんてできないですよね。何かを言えば、その分、オレらもやらなきゃいけないとなりますから。それがないということは、責任感がないのかもしれない」 日本代表を愛してやまないがゆえに、辛らつな言葉の数々が思わず口をつくのだろう。本田の真意も理解している、と大久保は続ける。 「圭佑が悪役を引き受けていると思うんですよ。圭佑のビッグマウスは本当に素晴らしいことだと思う。言った分だけ、自分にプレッシャーがかかりますからね。オレもそっち系だから、すごくよく分かる。周りの選手も、もうちょっと見習うべきだと思いますけどね」 もしも念願がかない、日本代表復帰を果たしたときには……。 最初は波風が立つかもしれないが、テレビ越しに何度も胸中に募らせてきた檄と日本代表は泥臭くあれというイズムを、遠慮なくぶつけることが最終的には日本代表のためになると大久保は信じて疑わない。 雨降って地固まる、とばかりに。 「いい方向にいけばいいんですけど。でも、その前にまずは復帰しないと」