iPhoneが「ChatGPT標準搭載」に進化…ところでアップルとOpenAI、どちらが相手にお金を払うのか?
グーグル検索とChatGPTとの違い
これまでグーグルはiPhoneなどアップル端末上でデフォルトの検索エンジンとなるために年間180億~200億ドルもの大金をアップルに支払ってきた(これが米司法省による同社への反トラスト法訴訟でも主な争点の一つになった)。 しかし、これはiPhoneをはじめ世界全体で約22億台と見られるアップル端末からの膨大なトラフィックとそれに伴う巨額の広告収入が期待できるからのこと。その一部をグーグルは言わば「場所代」としてアップルに支払っていたことになる。 これに対しChatGPTは広告収入ではなく有料サブスクリプションが収入源となっている。この場合、たとえChatGPTがアップル製端末に標準搭載されて流入トラフィックが増したとしても、その分だけOpenAIに入ってくる収入が増えるとは限らない。 なぜなら、これまでパソコンやスマホアプリなどから無料でChatGPTを使っていたユーザーは、たとえSiriからそれを使えるようになったとしても相変わらず無料で使い続けると見られるからだ。 逆にアップル側から見れば、iPhoneなど同社製の端末にChatGPTを導入することで限定的なSiriの機能を補い、ユーザー・エクスペリエンスを高めることができる。となると、今回の提携ではむしろアップルの方がOpenAIにChatGPTのライセンス料を支払う、という可能性も考えられる。
アップルが生成AIの導入に踏み切った理由
そもそも今回の提携は、恐らくアップルの方からOpenAIに話を持ち掛けた公算が高い。 生成AI向け半導体の覇者とも言えるNvidiaの株価が年初来151%、OpenAIと手を組んで早々と生成AIを導入したマイクロソフトの株価が同14%も上昇したのに対し、それに出遅れたアップルの株価は精彩を欠いた。結果、それまで時価総額で世界首位だったアップルは、まずはマイクロソフトに抜かれ、最近ではNvidiaにも抜かれて第3位に陥落した。 その後、Nvidiaの株価が若干下げたので、アップルは現時点では第2位に返り咲いたようだが、とにかく生成AIを導入することは同社の株価を上昇させる、ないしは維持する上で必須条件だった。 現時点では自社単独で大規模言語モデルなどの基盤技術を開発することは難しかったアップルにとって、OpenAIは是が非でも手を組みたい相手であったはずだ。つまり両社の交渉に際して、OpenAIの方が有利な立場にあったと見て良さそうだ。 もちろんOpenAI側から見ても、世界全体に出回るiPhoneなどアップル製端末の巨大なユーザー・ベースにアクセスできるようになることから、ブランド認知度の向上や将来的な有料ユーザー数の増加などが期待できる。 この点から見れば、従来のグーグル同様、OpenAIがアップルにお金を払うという可能性も当然ある。