飲料水などの備蓄を確認する福留利郎施設長＝１４日、東串良町池之原のルーピンの里

　日向灘を震源とする最大震度６弱の地震を受け、鹿児島県内では高齢者をはじめ災害弱者の支援へ、避難態勢や備蓄の再点検が進んでいる。南海トラフ地震臨時情報（巨大地震注意）の呼びかけは１５日で終了したとはいえ、停電や津波避難への備えに懸念が残る。 巨大地震に備えて専門家がアドバイス、知っておきたい生き延びる知恵…ラップは万能防災グッズ　持って歩ける荷物の重さは?　正確な情報取得が大事

　「転倒や混乱がなくてよかった」。志布志市有明の介護老人保健施設「ありあけ苑」の井ノ上友成事務長は振り返る。８日の地震発生時、入所者約８０人が夕食のため食堂に集まっていた。移動時や夜間でなかったことに胸をなで下ろす。 　自力で歩けない入所者もおり、万が一の場合は併設の旧有明病院２階に避難する計画。近日中に体調や介護度、気候を考慮した臨時訓練を実施する予定だ。 　一方、同市志布志の前川河口に近い障害者就労支援施設「セルプしぶし」とグループホーム「愛生ホーム志布志」。発生当時、通所者は帰宅済みで入居者約２０人と職員は、津波に備えて車で高台に避難した。夜間帯は、５階建ての建物の上の階に逃げる方針を入居者と改めて共有した。 ■□■ 　３８２事業所が登録する県老人福祉施設協議会によると目立った被害はなかった。半面、災害への備えの再点検で、電源確保への懸念が浮き彫りになった。 　「停電による熱中症が怖い。非常用電源は災害時、命に関わる医療機器が最優先となる」。東串良町池之原の特別養護老人ホーム「ルーピンの里」の福留利郎施設長（５１）は訴える。利用者が抱く不安へのケアや短時間での津波避難も容易ではないとする。

　停電に危機感を抱くのは肝付町地域包括支援センターも同じ。在宅医療で高齢者が人工呼吸器や痰（たん）の吸引器、電動ベッドなどを使うからだ。黒木大剛係長（５０）は「患者、介護者双方の負担軽減に努めたい」とし、対象者や避難先の電源の状況把握を始めた。 ■□■ 　電源確保は、呼吸器や吸引器が欠かせない医療的ケア児（医ケア児）にとって命に関わる。だが、県家族会の柿内祥子代表（４５）は「地域の指定避難所に非常用電源がないケースがみられる」と指摘する。 　南海トラフ地震の臨時情報が一段階高い「巨大地震警戒」の場合は事前避難が求められるが、医ケア児を受け入れられる避難所の整備は進んでいないのが実情だ。「行政や支援者が連携して災害に備えるには一定の期間が必要」と柿内代表。いつ起こるか分からない大地震に備え、「スピード感を持って対策を取る必要がある」と話した。