宿命の血統対決 ジャパンCで同着V見たい 井崎脩五郎のおもしろ競馬学
ディープインパクトがいかにすごい馬であったか。 それが近刊の『血統と戦績で読む伝説のダービー馬図鑑』(監修=江面弘也/イースト・プレス)のページをめくっていると、あらためてよく分かる。 <2歳12月の新馬戦は4馬身差の快勝。3歳1月の若駒Sでは、4コーナーで先頭の馬まで10馬身ほどの差がありながら、鞍上(あんじょう)が追うことなく差し切った上、5馬身突き放してゴールしている。> あの若駒Sの勝ちっぷりは、歴史的な馬が出現したことを強く印象づけた。レース翌日、始発バスに乗って発車を待っているとき、まだ他に誰も乗っていない車内を運転手さんがつかつかと歩いてきて、「ねえ、きのう京都で勝ったあの馬、すごい馬ですよね」と同意を求められたのは忘れられない。競馬好きが、語りたくて仕方ない気持ちになる、まさにオーラあふれる馬だったのだ。 無敗で3冠を達成したディープインパクトは、その勢いに乗って有馬記念に出走する。断然人気。 だが、追い込み届かず、まさかの2着。勝ったのは、ひとつ年上のハーツクライ。 両馬ともその後、種牡馬として大成功しているのだが、今週のジャパンCは、その両馬の血がぶつかり合う。 アイルランドから来日しているオーギュストロダンは、父がなんと、わが日本のディープインパクトなのだ。ディープの血を熱望し名牝を日本に送り込んでみごとに受胎。しかも、生まれたオーギュストロダンを英国ダービー馬に仕立て上げての来日である。 これを迎え撃つ日本の大将格が、おととしの日本ダービー馬ドウデュース。この馬の父親は、ハーツクライなのである。加えて、ドウデュースの手綱を取るのは、ディープインパクトの全てのレースでコンビを組んでいた武豊騎手。 はたして武豊騎手の思いはと想像する。「勝ちたいが、ディープの子にもぶざまなレースはしてほしくない…」。ファンは「同着で優勝なら絵のよう」という。分かるなあ。(競馬コラムニスト)