日本の電力3割を担う石炭に危機「脱炭素と言われても最低限必要なものは国として明示すべき」石川和男が指摘
政策アナリストの石川和男が7月27日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。オーストラリアの石炭生産事情が日本に及ぼす影響について議論した。
世界的な脱炭素の流れのなかでも、昨年、世界の年間消費量が過去最高の85億3600万トンを記録した石炭。資源量が豊富で、採れる地域に偏りがなく、コストも安く安定していることから世界中で重宝されてきた。 一方、昨年の石炭生産量世界第5位のオーストラリアでは、2年前の政権交代でエネルギー政策を転換。石炭火力が全発電量の約5割を占めていたが、「2030年までに再エネ電力82%」を国の目標として掲げ、新たなクリーンエネルギー制度の導入などを進めている。 現在、日本国内で必要な石炭の99%以上は輸入に頼っており、うち約6割をオーストラリア産が占める。 この現状について、ゲスト出演したエネルギー経済社会研究所代表の松尾豪氏は「(2030年までに再エネ電力82%目標は)相当野心的な計画」と述べつつも、「一部のエリアでは需要を超える再エネ発電も出てきている。今後、カーボンニュートラルに向けて、原子力を含めた開発をする進める可能性もあり、オーストラリアのエネルギー政策は大きな転換点にある」と指摘した。 続けて「これはオーストラリアの問題というより、西側の金融機関のファイナンスド・エミッション(金融機関の投融資先の温室効果ガス排出量)の問題でもある」と切り出し、金融機関による投融資先の二酸化炭素排出削減責任に言及。「特に懸念しているのは保険分野」だとして、二酸化炭素を大量に排出する鉱山企業への労務災害や輸送などに対する保険引き受けが一部で止まりつつある現状を指摘。「まだ想像の世界で推定の話だが」と断ったうえで、脱炭素意識の高い欧州勢が得意とする、石炭を運ぶ際の船舶にかける再保険の引き受け停止についても懸念を示した。 そのうえで「オーストラリアからの石炭輸入が止まったら、日本の電力供給にとどまらず、東南アジアや南アジア、中国にも影響が出る」と語った。 現状、日本国内では天候によって大きく左右される太陽光発電など再エネ発電だけでは電力の安定供給に難があるため、原発や火力発電をベースロード電源として電源を構成している。原発再稼働が進まないなか、発電量の約7割(2022年度)を火力発電に頼り、そのうち3割が石炭火力発電の日本。 石川は「脱炭素の流れのなかで石炭はもうダメだと言われるが、原子力や天然ガス火力はそう簡単にはできない。石炭火力も基本的な大事な資源エネルギー。日本はほぼ全量輸入に頼っており、脱炭素のなかでも石炭の最低購入量を国として明示すべき。あと何年間は毎年必ず買い続けますというコミットメントを出すということが、外国の石炭の産地に対する大きな安心材料になるし、保険も含めたシステム維持の前提になっていく」と指摘した。