資産家の親の相続に悩む経営者、相続税の試算“数千万円”に思わず唸るも、最後は母親の目に嬉し涙…全員が幸せになった「3つの提案」とは【経営者専門FPが解説】
両親への状況説明
当日、少し緊張をしたAさんと私で、Aさんのご実家へ向かいました。その道中も「このアパートは親父の名義です」とか「ここの畑も親父の名義のはずです」など案内をしていただき、いよいよ到着しました。 ご両親は70歳後半ですが、お元気そうな様子でした。私を見て「この人は?」と戸惑いの様子を見せられたので、「実はAさんの会社経営についてアドバイスをさせてもらっている保険屋です。今日は会社の現状を報告させて頂くためにご一緒させていただきました」。名刺を差し出すと、怪訝な表情をしながらも「そうですか。それはご苦労様です」と居間に通していただきました。 お母様が淹れたお茶を置いて、それに口をつけたところで、事前の打ち合わせ通りにAさんから「おかげ様で最近になって、なんとかやれるようになりました」と切り出してもらいました。Aさんのお話をお父様はじっと黙って、お母様は心配そうに聞かれていましたのが印象的でした。 話し終えたAさんがカバンから決算資料と月次試算表を「今はこんな感じ」と照れ臭そうに出しました。お父様は資産家で個人事業として不動産事業を行なっているので、多少なりとも決算資料はご理解できる様子で、ざっと一通り目を通して「そうか……でもまだまだ厳しそうやな」とだけおっしゃられました。 少し重たい空気になったので、私があとを引き継いで決算書と月次試算表をゆっくりと丁寧に説明し、見た目の数字ほどは悪くない状況をお伝えしました。お父様はいくつか質問を交え、頷きながらじっくりと聞いていました。そして、それなりにご安心をされた様子で、「まぁ景気はよくないけど、このまましっかり頑張れよ」とだけおっしゃいました。
不動産持ち、生命保険ナシの両親。資産にかかるヘビーな相続税
少し場が和んだところを見計らって、私のほうから「ところで、今日こちらへの道中Aさんから教えていただいたのですが、かなり不動産をお持ちなんですね。その管理も大変ではないですか?」と投げかけをしました。 それに対しては「ええまぁ」とお茶を濁すような反応しかなかったので、私の方から顧客に経営者で資産家の方が多いこと、大阪の不動産市況のこと、多くの資産家が悩まれている一般的なお悩みや事例などを一通りお話ししました。 するとお父様がおもむろに立ち上がって「実はね……Aには一切言っていないけど、先日、とある業者に相続税の試算をして貰ったんですよ」と言って、その資料を持って来られました。その資料の表紙には有名な不動産業者と某税理士法人の名前が入っており、ページをめくりながら「概算ではこんな税額らしいです」と私に見せられました。 そこに書かれていた税額は数千万円と、それなりの金額が書かれており、横で見ていたAさんが思わず「うわぁ~」と声に出す金額でした。お父様に許可を得て、そのシミュレーション資料を拝見したところ、課税財産には所有されている不動産や金融資産だけでなく、Aさんへ貸付した金額も記載されており、ある程度きちんと試算がされている様子が伺えました。 ただ気になったのが、生命保険金と死亡退職金の記載がなかったこと。確認をすると、ご両親ともに生命保険は一切加入しておらず、不動産事業は個人事業で行っていました。それをお伺いしてから、私は持っていた紙とボールペンを出して家系図を書きながら、相続財産の非課税枠について説明を行いました。 ご両親は興味深そうに聞きながら、時折質問も交えてようやくご理解をされた様子でした。一通り聞き終えたところで「で、どうすればよいのですか?」と質問をされましたので、私の方から「もしよろしければ次の機会に具体的な提案をさせて下さい」とお願いをして了承をいただき、3時間近い面談を終えて退出しました。
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