グラバー図譜のカレンダー発売 干潟の魚テーマに5周年記念講演も
長崎にゆかりのある魚類図鑑「日本西部及び南部魚類図譜(通称=グラバー図譜)」の魚図を用いた卓上カレンダーが現在、販売されている。(長崎経済新聞) 【写真】有明海にまつわる12魚種を月ごとに紹介したカレンダー グラバー図譜はスコットランド人貿易商トーマス・グラバーの次男で水産学者の倉場富三郎(トーマス・アルバート・グラバー)が編さん。明治末から昭和初期にかけて行われた同図譜の編さんには倉場富三郎が雇った5人の地元画家が長崎で水揚げされた魚を形態や色彩から、うろこの数に至るまで正確に描写。多くの魚方言(地方名)も記されている。全32集806図に及ぶ図譜は倉場富三郎の死後、日本銀行総裁などを務め、漁業史などにも精通する渋沢敬三の手に渡っていた。長崎大学水産学部の設立がきっかけとなり1950(昭和25)年に同大に寄贈された経緯がある。 カレンダーは同大水産学部の山口敦子教授が、同大に所蔵されているグラバー図譜を一般に手にしてもらうことで広く知ってもらうと同時に「海の環境を維持し、これらの魚が100年後も食卓を彩っていてほしい」と5年前に手作りで製作。大きな反響があったことから「長崎のうんまい魚めぐり」「長崎のきれか魚を食べてみんね」など毎年テーマに沿った魚種にスポットを当ててきた。 今年は山口教授が20年以上にわたり研究に携わってきた有明海を中心に「干潟の海の魚たち」をピックアップ。A5サイズの卓上サイズで、グラバー図譜の魚図と共に山口教授らが撮った標本写真と魚の特徴などの解説を添える。使用後ははがきとして利用できる。5周年記念の「干潟の海の魚たち有明海マップ」も付属する。 長崎大学文教キャンパス文教スカイホール(長崎市文教町)で12月5日、ハイブリッドで記念講演会を行う。入場無料。要事前申し込み。 「紙質やデザインにもこだわり、今年はかわいいと思ってもらえるようなピンクの表紙に仕上げた」と話す山口教授。カレンダーの制作が学術研究の一環としても認められ、一般にもカレンダーを通じて研究に興味を持ってもらうきっかけになっていることから、「有明海といえばムツゴロウなどのイメージがあるかもしれないが、サメやエイなど大型の捕食者が豊富に生息することが分かってきている。海域ごとでも生態系に特徴があり、有明海の豊かさやユニークさを知ってもらうきっかけになれば」とも。 1部1,200円。同大生協(文教町・坂本・片淵)と同大病院「ベーカリーボードイン」(坂本)で扱う。部数限定。
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