「白タク」行為で運転代行業者が廃業、広がる波紋 「ここまで重いとは…」業界内に慣習化、「よそは乗せてくれた」客の要求も一因か
鹿児島県鹿屋市の大手運転代行業者が今夏、営業に必要な認定を県公安委員会から取り消された。代行業者の車(随伴車)に客を乗せる「白タク行為」により道路運送法違反で摘発されたためとみられる。ただ、要望する客も問題と指摘する関係者も。鹿屋警察署は「業者も利用者も違法行為と認識してほしい」と呼びかける。 【関連】代行運転料を惜しんだ代償は大きかった…ハイボール10杯以上飲み飲酒運転、県職員をひき逃げ死亡させる 21歳男、起訴内容認める 鹿児島地裁初公判
「違法という意識が薄れていた」。6月に認定取り消し処分を受けた業者の代表は明かす。市内で有数の規模を誇り、夜の街で最大9台を走らせていた。 代表によると、警察に摘発されたのは2023年9月末の未明。客を事務所で随伴車に乗せ、車を止めたという数百メートル離れた駐車場まで送る途中だった。今年1月、随伴車を運転した従業員1人と代表、会社は計80万円の罰金刑の略式命令を受け、納付した。 認定取り消し処分の通知が届いたのは6月24日。代表は「(白タク行為が)慣習化していた感は否めない。ただ、それは業界全体でも同じだと思う。自分たちだけがここまで重い処分とは驚いた」と肩を落とす。 ■□■ 「代行がつかまらず、お客さんにスムーズに手配できないことが増えた」。週末の7月27日、客にドリンクを運んでいた本町の飲食店スタッフ(24)は嘆いた。 7月5日時点で市内には26の代行業者があり、県内有数の規模。ただ、コロナ禍で飲食店街の客足が減る中、営業をやめた業者も少なくない。さらに今回の廃業の影響で“帰宅難民”になる酔客は増えている。
本町周辺で夜に客待ちをするタクシー運転手の男性は「こちらの客も減るし、白タク行為は違法だと分かってほしい」と語気を強める。ただ、同じ地域交通の担い手として、「何とか一緒に頑張らないと」とエールも送る。 ■□■ 代行業者側には、身勝手な利用者の存在を指摘する声もある。「客に『そこまでだから』『よそでは乗せてくれた』と詰め寄られ、断り切れないケースもあると思う」と明かすのは、別の運転代行業の代表者だ。「利用者の理解もないとトラブルになることがある」と語る。 市内では3月に飲酒運転死亡事故があった。鹿屋署は事故を踏まえ、取り締まりを強化。今後は飲食店や自治体などを巻き込んで啓発に力を入れる方針だ。 同署は「運転代行は飲酒運転防止に有効な手段の一つ」と考える。その上で「業者がルールを守るだけでなく、利用者のマナー向上も必要。お互いのためにも適正利用を意識してほしい」とした。 ◇代行業者の白タク行為 運転代行業者が利用客の車まで客本人を随伴車に乗せて運ぶ行為。「AB間輸送」と呼ばれる。道路運送法第4条の違反となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる。飲食店など利用客がいるA、利用客の車が止まるB、利用客の自宅があるCの3地点の中で、BC間が代行運転区間となる。
南日本新聞 | 鹿児島
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