「今の音楽はトラウマレベル」堕落したロックと社会をファット・ホワイト・ファミリーが辛口批判
戦争の時代とディストピア
―あなたたちはデビュー当初からナチズムやホロコーストをタブーとせずに言及し、ファシズムの危険性も取り上げてきました。そんなあなたたちから見て、戦争の時代となってしまった2020年代の現状はどのように映るのでしょうか? リアス:現在起きていることは、元から秩序に内在していた欠陥が、最も恥知らずなやり方で露呈し始めたっていうことじゃないかな。特にここイギリスは、ある意味アメリカの51番目の州のようなものだから。例えば、ウクライナ戦争がそう。欧米ではウクライナ戦争について大々的に報道され、誰もがウクライナのために血の涙を流すはずだった。ところが、ガザでの空爆が始まった際に、欧米のリベラルメディアは「見て見ぬふり」まではしなかったけど、「人々が死体で発見された」という風にいつも受動態で報じたんだ。 ―取り上げ方に温度差があったと。 リアス:俺たち(西側諸国)は、この紛争について何年も神聖なものに見せかけてきた。そして現在、大勢のアラブ人が虐殺されている。欧米の権力基盤にとって、これは戦術的には必要なことなのかもしれない。俺たち(西側諸国)は、裏で彼らを支援しているから。でも、西側諸国の慰めの幻想のようなものが露呈してきて、「おいちょっと待てよ、(西側諸国がやっていることに)プーチン以上の道徳的正当性はないよな?」みたいな感じになっているんだ。俺たち(西側諸国)は政治的により発展していて、より進歩的な風土を持っているのかもしれないが、肝心なのは、俺たちも同様にクソッタレ虐殺集団ってこと。だから、事態が長引く限り、不快な真実がますます増えていくだろうね。 ―では最後に、今の社会状況の中で、もっとも希望を感じること、もっとも失望を感じることをそれぞれ教えてください。 リアス:今の社会状況で、むしろ失望を感じないことなんてあるか? 権力者たちが俺たちの芸術に価値がないと決めてしまったようなもんだよ。俺たちは、仕事量に値する十分な金額を得ていない。巨大アリーナでのショーがどんどん大きくなる一方で、小規模のライブ会場は軒並み閉鎖された。20年後には、北朝鮮みたいな世の中になるだろうね。巨大マシンが定めた文化以外の文化は一切存在しなくなる。 ―ディストピアですね。 リアス:いろんな意味で憂鬱だよ。(数十年後には)30代半ば以降の人間は、インターネットに毒され、文化が破壊される前の世界を思い出せる最後の世代になるだろうね。俺たち自身もインターネットやスマホで半ば破壊されちまったけど、大嘘がのさばり、あらゆるものがシリアル化される前、人間らしい生活や個性が尊重される純粋な時代があったということを後々思い出すんだろうね。機械のように振る舞い、考え、創造するように育てられた人たちに次々取って代わられるにつれて、俺たちはますます賢者のように見えるだろうね。人生の終焉に近づき、年を取った俺たちには、神秘的な風格が出てくると思う。 ―では、もっとも希望を感じることは? リアス:技術的進歩によって、特定のことがより容易にできるようになったり、アクセスしやすくなったこと。そういう意味では、本当の意味でのオリジナリティは、もはやほとんど不可能な時代になってきた。人間は自分自身を機械に見立てたようなもので、本当にできることはコラージュのようなものだろうね。基本的に誰もがDJになれる時代だよ。過去100年に生まれた作品の中から、選ぶだけ。でも、悪いことばかりじゃない。中には本当に面白いものもあるから。そして、全てのものにアクセスしやすくなったことは、魅力的なんだろうね。
Yoshiharu Kobayashi