「南北冷戦」と「カントリーリスク」に注意 バフェットが熱視線送る企業が目の前にある日本、海外市場に出る理由は見当たらない
【バフェットの次を行く投資術】 かつての中国ブームに乗って進出した企業の経営者、あるいは資金を投じた投資家たちは現在「カントリーリスク」の恐ろしさが身に染みているのではないだろうか? トヨタ自動車が電気自動車(EV)化と距離を置いていたことに対しては「出遅れている」と多くのメディアが非難した。しかし、今やEV化が行き詰まっていることは、誰の目にも明らかだ。 またトヨタは、中国には「独特の政治リスクがある」として進出に慎重であったが、これも「出遅れている」と非難された。日本企業の社員がスパイとして拘束される恐怖におびえる現在では、どちらが正しかったのか明白だ。 そして、バフェットも21世紀に入るまで(70歳頃まで)は海外への本格的投資を行わなかった。彼に言わせれば「米国という巨大な市場で儲からないのに、河岸(かし)を変えれば儲かると考えるのは浅はかだ」ということである。 そのバフェットも、「米国市場で思うように儲からなくなった」こともあって、すでにまとめ買いした5大総合商社を始めとする日本企業に熱いまなざしをおくっている。 バフェットも注目する日本市場が目の前にある日本の投資家が、わざわざカントリーリスクのある海外市場に出るべき理由は見当たらない。 しかし、もし海外市場で投資を行うのであれば、現在の世界を読み解くキーワードである「南北冷戦」には十分注意すべきである。 かつて米国とソ連が対立した「東西冷戦」は、1991年のソ連邦崩壊という結末で終わった。ベルリンの壁崩壊から数えれば35年、米国一極支配が続いたわけだが、再び多極化の時代に入り、それが「南」と「北」という二大勢力に集約されつつあるのだ。 (人間経済科学研究所、国際投資アナリスト・大原浩) =敬称略