大型補強の巨人は2年前のオリックスの二の舞にはならないのか?
横浜DeNAに敗れたCSの戦いが顕著だったように、今季、先発で2桁をマークしたのは田口麗斗一人だけで、エースの菅野智之に続く先発陣が不安だった。その巨人の最大のウィークポイントを先発実績を持つ山口、吉川の2人で埋めたことへの期待は大きい。また好不調の波が出てきた中継ぎ左腕の山口鉄也の負担を森福は軽減するし、新外国人は長いシーズンを考えると、マシソン、沢村らのサポートにもなる。 FAで移籍してきた選手には、「自分のことしか見えない、考えられない」という傾向が生まれるが、ピッチャーだと、そういう利己主義はチームのマイナス要素にはならない。 広島とチーム本塁打数差が25本あったことを考えると、一発のあるマギーが加わることは、その差を埋める作業となるし、2年目のギャレットが不安定のままなら、クルーズを含めて外国人に競争意識を持たせ、好不調、怪我などのアクシデントに備えることにもなる。備えで言えば、マギーの存在は、村田、阿部らベテラン勢が、内野に居座るチームの不安を解消することにもなるだろう。 巨人がバランスに気を配った大型補強を仕掛けたのは自身が持つトラウマかもしれない。 1994年に、伝説の10・8決戦で高木・中日を破って優勝、日本一となった長嶋巨人は、連覇を狙ってそのオフに大型補強を仕掛けた。ヤクルトから広沢克己とジャック・ハウエル、広島から左腕エースの川口和久をそれぞれFA補強。資金力と巨人ブランドを背景にした大補強で、開幕前にはV2有力と評論家予想されたが、終わってみれば川口がわずか4勝、広沢は20本塁打、72打点の数字にまとめたが開幕直後は大不振で、結局、ペナントレースでは3位に敗れ、野村克也監督のヤクルトが優勝した。 「あのときの巨人は、広沢、落合、ハウエル、松井と大型バッターをそろえたが、小技や機動力を持ってつなぐバッターがいなかったためバランスが崩れた。ビッグネームを揃えれば勝てるというわけでなく、チームバランスが重要。今回は、野手で言えばスピードのある陽を若手がポジションを奪いきれなかった外野の一角に加え、ベテランの村田任せとなっていた三塁、チャンスに弱かったギャレットをマギーで埋めようという補強だから、バランスも取れている。 それと失敗の可能性が低いのは、他球団の補強状況にもある。横浜DeNAは、2桁勝利の山口を抜かれ、その穴は未知の新外国人。広島は2桁勝ったチーム支柱の黒田が引退した。阪神は糸井をFAで取ったがゴメスが退団して一塁が空いたまま。他チームとの相関関係で考えても、巨人の戦力プラスが目につく。間違いなく優勝候補でしょう」と、前述の池田氏。 他球団にすれば大型補強した巨人の死角を探したいだろうが、マギーの加入で、外国人と村田の起用についてポジションがだぶり、ベンチが迷う部分と、陽がフル活動できるのか、吉川がセ・リーグの野球にアジャストできるのか、の3点くらいしかネガティブな要素は見つからない。勝って当然のプレッシャーをはねのけて外国人起用の問題を2年目の高橋由監督がどう裁くのか。いずれにしろ大型補強に成功した巨人を中心に来季のペナントレースは動きそうだ。