始まった「令和のマネロン退治」 検察と警察がタッグ、トクリュウ壊滅へ
犯罪などの違法収益を正当な手段で得た資金に見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)に対する捜査が、年々強化されている。令和3年の最高検の通達を契機に、検察と警察の連携が進展。昨年の47都道府県警による総摘発件数は909件に上った。勢いを増す匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)などの組織犯罪グループを封じ込めようという意図があり、捜査幹部は「マネロンによる違法収益の確保阻止こそが壊滅に向けた近道だ」と意気込む。「令和のマネロン退治」の行方は-。 【表でみる】SNSなどでの闇バイト募集の構図 ■最高検が「大号令」 マネロン対策は、「規制」と「摘発」が2本柱となっている。 規制面では、平成19年にマネロンを罰する犯罪収益移転防止法が成立。28年には改正法が施行され、銀行などの金融機関に限らず多くの事業者に対し①本人確認②確認記録や取引記録の7年間保存③疑わしい取引の届け出-などが義務付けられた。 摘発を巡っては、G7サミット(先進7カ国首脳会議)の合意で設置され、日本も参加する国際的なマネロン監視の政府間会合「金融活動作業部会(FATF)」の勧告が転機となった。 法務省の犯罪白書では、日本が「マネーロンダリング対策およびテロ資金供与対策における国際的な連携に積極的に参加している」と説明。FATFは、その国際連携の要といえる。 そのFATFが令和3年8月、日本のマネロン対策について「事件の起訴率が低い」「犯罪収益の没収が不十分」などと勧告。これを受けて最高検は同年11月、全国の高検と地検に「警察と緊密に連携し、組織犯罪処罰法と麻薬特例法を駆使して徹底捜査せよ」と通達、大号令をかけた。 ■10年前の3倍超に 総務省所管の独立行政法人・統計センターのデータによると、マネロンの摘発件数は、年末に最高検の通達が発出された令和3年は632件だったが、4年は729件、5年は909件と増加。300件だった平成26年から比べれば10年間で3倍超となっている。 犯罪組織の維持・拡大や新たな犯行への投資防止のため、法律で事業者に届け出ることが義務付けられた「疑わしい取引」の申告件数は、令和3年の53万件から5年は71万件に増加。このうち検察や警察などの捜査機関に提供された取引の件数も52万件から69万件、捜査に活用された件数も35万件から50万件へとそれぞれ急増した。