大手ゼネコン、業績「急ブレーキ」でも、株価が上がり続ける理由とは?
上場企業による2017年3月期決算の発表が完了して2週間が経過。6月下旬の定時株主総会に向けて各企業は取り組み始めている。一方、株式市場では決算公表時に打ち出した会社側の今2018年3月期業績予想の洗い直し作業を本格化させ、6月初旬には大手証券の企業業績見通しが発表される。 そうした状況下、「会社側の収益予想は、かなり保守的」とされ、期中での上方修正が有望視されているのがゼネコン各社だ。それを先取りするように、大手ゼネコンの株価は快調な上値追いを続けている。業績と株価の両面を探ってみよう。(解説:証券ジャーリスト・神田治明)
経理担当者の言い分
「よく保守的な見通しと言われるのですが、私どもとしては(数字が)決まらないと織り込めないので、結果的にこうした内容になってしまうのです。資材費の上昇や『働き方改革』の動きに伴う人件費増も考慮しています」 ある大手ゼネコンの経理担当者は、今3月期の収益予想が「保守的」という株式マーケットの評価をどう思うか、との質問に対し、こう語る。 この場合、経理担当者がコメントした「決まらないと織り込めない」というのは、ゼネコンが建築や土木工事を請け負う際に取引先との間で決定する具体的な受注単価など契約の細目を指す。 利益率を大きく左右する受注額の規模や単価などが未確定の部分が多いのに、経理サイドとしては、こうあって欲しいという「期待値」や背伸びした数値を前提にして計算するわけにはいかない。したがって、過去の実績値をベースにした「手堅い数値」を対外的な見通しにせざるを得ない、というのが会社側の言い分だ。 それにしても、「スーパーゼネコン」と言われる上場大手ゼネコン4社の今3月期の利益見通しは、前期実績との落差が目立つ。
「意識的抑制」見通しの側面も
例えば、清水建設(1803)は前3月期の連結営業利益が1288億3500円(前々期比36.1%増)と大幅な伸びを記録したのに対し、今期の見通しは965億円(前期比25.1%減)。鹿島も前期は1553億9200万円(前々期比39.9%増)だったが、今期は一転して1060億円(31.8%減)と、ざっと500億円幅の大幅ダウンを見込んでいる。 この2社ほど減益率は大きくないものの、大成建設(1801)は前期の1408億2000万円(前々期比19.9%増)が今期は1250億円(前期比11.2%減)の見通し。4社のうち、唯一、大林組(1803)は前期の1337億4200万円(前々期比25.7%増)に対して、今期が1345億円(前期比0.6%増)と、かろうじて横ばいをキープする見込みだが、2014年度以降の目覚ましい伸びに比べると、急ブレーキを踏んだ格好だ。 各社がこうした今期予想を打ち出すのは前述した経理的なテクニカル要因やコストアップ要因があるのは確かだろう。しかし、それだけではなさそうだ。 ここ数年、大手ゼネコン各社の業績予想を見ると、期初には決まってかなりシビアな数値を公表している。その後、四半期決算の発表とほぼ歩調を合わせるようにしてその見通しを上方修正するケースが多い。 「受注環境が想定以上に良く、コストダウン策も寄与した」というのがゼネコン各社の公式説明だが、ある証券アナリストは「年度立ち上がりの時点から、大幅増益見通しを打ち出した場合、儲け過ぎと白い眼が向けられる恐れがあり、それが受注単価にマイナスに影響するのを避ける判断が働いているのではないか」と推測する。