木村拓哉の手さばきに酔う!調理音、咀嚼音…”ASMR”を堪能できる『グランメゾン・パリ』は“IMAX推し”
2019年にTBSの日曜劇場枠で放送され、多くの作品ファンを生み出したドラマ「グランメゾン東京」。木村拓哉演じるフランス料理のシェフ・尾花が、鈴木京香演じる女性シェフ・倫子と出会い、周囲と衝突しながらも三つ星レストラン「グランメゾン東京」を作るべく、仲間と共に奮闘する姿を描いた。そして、あれから5年――。待望の劇場版となる、その名も『グランメゾン・パリ』が公開。フランス料理の本場・パリを舞台に、尾花たちは、アジア人初となるミシュラン“三つ星”獲得へと挑むことになる。 【写真を見る】目にも鮮やかなフレンチ料理を大画面で堪能!『グランメゾン・パリ』IMAX版の見どころを徹底レビュー ドラマから続いて、ホール責任者の京野陸太郎を沢村一樹、シェフの相沢瓶人を及川光博、フードインフルエンサーのリンダ・真知子・リシャールを冨永愛が好演。さらにパティシエのリック・ユアンにオク・テギョン(2PM)、コミ(見習い)の小暮佑に正門良規(Aぇ! group)など個性豊かな新メンバーも登場する。目にも鮮やかで、まるで芸術品のようなフランス料理の数々や、美しいパリの街並みがスクリーンいっぱいに映し出される本作は、極上の映画体験を叶えるIMAXでこそ堪能してほしい一作だ。本稿ではIMAXで観るべきポイントをご紹介したい。 ■素材の質感、調理の音、食べる音。とにかく聴覚を刺激するASMR なんといっても「グランメゾン」の見どころは、プロの目で厳選された新鮮な食材の数々を、一流のシェフたちが手際よく調理し、洗練されたホールスタッフが優雅な振舞いでサーブする流れ。ゲストがナイフ&フォークで切り分け、口に入れるや、目を大きく見開きながら全身で料理を堪能するという、その一連の動きをまさしくエンタテインメントにしてスクリーンの前の観客に提供し、もてなすところにある。 自分の身体は、暗闇の中でただ映画を観ているだけなのにIMAXで観るとオープニングからエンドロールにいたるまで、五感を刺激されるような感覚を覚えずにいられない。その最大の理由は、臨場感を際立たせる“音”。朝採れの野菜をザクザク刻んでは、オマール海老の殻をパリッと割り、熱した鍋にオイルを注ぎ入れてジューッという音を響かせながら、旬の肉や魚を焼き上げる。ロック調のサウンドをバックに、厨房内やホールを縦横無尽に動きまわるカメラで撮影され、倍速再生される調理シーンに、絶妙なタイミングで次々挟み込まれる大小様々な“音の断片”が、観客を一瞬のうちに「グランメゾン」のテーブルへと誘う。最高峰の音響設備が整うIMAXで鑑賞すれば、耳心地で脳がゾワゾワするASMRが味わえる。 ■目にも鮮やかな料理の数々。美味しい、華やかなフレンチはIMAXで 思わずお腹がすくような肉料理やパイ、エディブルフラワーが飾られた美しい彩りのデザートなど、本作のもう一つの主役とも言える料理の監修を手がけるのは、2020年にミシュランガイド・フランスで実際にアジア人初となるフランスのミシュランガイドで三つ星を獲得した「Restaurant KEI」の小林圭シェフ。世界最高峰と称されるフランス料理の本場パリを舞台に、アジア人初となる“三つ星”獲得へと挑む尾花たちの物語を、目で見ても楽しい料理の数々で鮮やかに彩る。 なかでもひときわ目を惹かれるのは、劇中で相沢が手掛ける「庭園風季節のサラダ」。実はこの一品こそ、小林シェフの代表作であり、「Restaurant KEI」のスペシャリテ。淡雪のようなレモンムースに数十種類の野菜やハーブを盛り付け、トマトのソースや魚の燻製などを合わせた一品。その見た目は芸術の域に達する。 尾花自ら盛り付ける「魚のうろこ焼き」や、パティシエのユアンが球形の型枠に入れて作る、メレンゲとクリームのデザート「ヴァシュラン」も、共に「Restaurant KEI」の有名な一皿で、その繊細な美しさに心をくすぐられずにいらない。まるでアート作品のように真俯瞰から捉えた料理やデザートを、その香りや食感まで想像させるほどに色鮮やかに映し出すIMAX。映画を観たあとは、誰かと感想を語り合いながら、目にも舌にも美味しいフレンチが食べたくなるだろう。 ■パリの風景や、クラシカルな洋館、レストラン、舞台もスクリーン映え タイトルが表す通り、本作の主な舞台となるのは、美しい街並みと、重厚感溢れる歴史的な建造物の数々に目を奪われる、フランス・パリ。ドラマ「グランメゾン東京」でも印象的だった、エッフェル塔を目前に臨める、セーヌ川に架かるビラケム橋や、エトワール凱旋門をはじめ、映画冒頭のガラディナーの会場として、フランスの老舗ハイジュエリーブランド「ブシュロン」本店が登場。パリコレモデルでもある冨永愛扮するリンダ・真知子・リシャールも、ゴージャスなドレスとジュエリーを纏い、「グランメゾン」の実力をみずからの舌で確かめにくる。尾花の師匠が経営する、螺旋階段が印象的な由緒ある三つ星レストランのシーンも、パリ16区にある、ロシア・スラヴ系のフランス料理を提供するレストラン「メゾン・レヴカ」で撮影された。本場で「三つ星」を追求しつづける尾花たちの「本物志向」を映像でも裏付けている。 リアルなパリを肌で感じられるのも、臨場感あふれる音と、目の前いっぱいのスクリーンで究極の没入感を促すIMAXならでは。1969年にパリ郊外に設立され、いまや世界最大級の総合卸売市場として知られる“パリの胃袋”こと、ランジス市場も、本作における重要なロケ地の一つ。およそ234ヘクタールもの広さを誇る広大な市場には、鮮度の高い肉や魚介、野菜、果物を扱う店が軒をつらね、なかにはパリの有名レストランに優先的に食材を卸す業者も。毎朝3時、4時から尾花がシェフの相沢やコミの小暮を伴い、粘り強く交渉しながら仕入れるシーンも見どころだ。 ■窮地に立たされたチーム・グランメゾンの真剣な表情、悔し涙… ドラマ「グランメゾン東京」から見続けているファンならば、かつてはカリスマシェフの称号を欲しいままにしていたものの、慢心から一度はドン底まで堕ちた経験を持つ型破りなシェフ・尾花が、いかにして再起を図ったかは自明の事実だろう。さすがの尾花も一目置くほど絶対的な味覚を持つ倫子や、“グランメゾンの良心”こと、心優しきジェントルの相沢に、尾花や相沢の性格を知り尽くす京野。そして、いまなお「グランメゾン東京」で働くすべてのシェフやスタッフの支えなくしては、ここまでの偉業は成し遂げられなかったはずだ。 名だたる巨匠たちがしのぎを削る本場フランスで、フランス料理で “三つ星”を獲得することは、尾花にとっての悲願。だが、異国の地に店を構えるシェフにとっては満足のいく食材を手に入れることにすら高い壁があり、“三つ星”に選ばれるなど、夢のまた夢。「グランメゾン・パリ」は長らく結果を出せない日々が続いていた。あるガラディナーでの失態が原因で、かつての師と「次のミシュランで三つ星を獲れなければ、店を辞めフランスから出ていく」という約束を交わしてしまった尾花のことを、グランメゾン・パリのスタッフたちは支え切ることができるのか…。 パリが舞台ということもあり、尾花の店で働くシェフやスタッフも、実に国際色が豊か。尾花は、パリで自分の店を持っていた韓国系カナダ人の天才パティシエである、リック・ユアンを引き抜くが、料理に対する思いの強さゆえに、2人はたびたび衝突を繰り返す。一方、尾花を尊敬するシェフの卵の“グレ”こと小暮は、誰とでもすぐに打ち解ける人懐こい性格で、潤滑油の役割を果たしている。高画質&高音質のIMAXで観ることで、言葉にならない表情で魅せるキャスト陣の繊細な芝居と共に、日本人キャストが挑んだ流暢なフランス語にも注目したい。とある理由から、フランス人マフィアに追われることになったユアンや尾花が、反撃のために繰り出す橋下での激しいアクションシーンや、燃え盛る炎から間一髪で脱出するシーンも見逃せない。 IMAX向けの作品と言えば、派手なアクション作品ばかりだと思われがちだが、本作『グランメゾン・パリ』のように、歴史的な建造物に細かな装飾が施された美しいパリの街並みや、美麗で繊細な料理の数々を、音や質感で堪能する楽しさもある。ドラマ「グランメゾン東京」に引き続き、映画『わたしの幸せな結婚』『ラストマイル』ほか、TVドラマ「MIU404」「アンナチュラル」などの話題作を手掛ける塚原あゆ子監督と、映画『キングダム』『ゴールデンカムイ』の脚本も手掛けた黒岩勉によるタッグで贈る『グランメゾン・パリ』。挫折や国境の壁を乗り越え、仲間と共に世界最高峰の“三つ星”を目指す尾花の挑戦を描いた『グランメゾン・パリ』を、ぜひともIMAXで味わってほしい。 文/渡邊玲子