すぐそばに広がる異世界 福岡市東区・奈多海岸の絶景が話題
長い歴史が眠る場所
ひょっとしたら土器の破片を見つけられるかも――。淡い期待を抱きながら、海岸線を歩いたが、それらしきものはない。流木を杖(つえ)の代わりに砂浜を散歩していた年配の女性に声をかけると、「以前はよく見つけたけど、最近は見なくなりましたね」と教えてくれた。 もし見つけても持ち帰ると遺失物法違反に、掘ると文化財保護法違反になる恐れがあり、博物館は注意を呼びかけている。 遺跡周辺では、槍(やり)の先に取り付ける旧石器時代の狩猟道具も見つかった。そうした遺物から、海の中道の北側には草原が広がっていたと考えられるそうだ。
まさにこの場所に、数万年前の営みがあった。はるか昔の人たちも、押し寄せては消える波のうねりを見つめ、潮風の調べを聞いていたのだろう。 たとえわずかな時間でも、遠い昔にタイムスリップして人々の暮らしを写真に撮れたなら――。悠久の歴史を見つめてきた海岸に腰を下ろし、空想の旅に心躍らせた。
読売新聞