悔しい復帰戦も喜田拓也、横浜FM一筋で250試合出場「このクラブで毎日身を削って戦えることがどれだけ幸せか」
[5.3 J1第11節 横浜FM 1-1 磐田 日産ス] 横浜F・マリノスは終盤の失点が響き、昇格組のジュビロ磐田と1-1で引き分けた。前々節の湘南戦(△2-2)、前節・C大阪戦(△2-2)と1点を先行するたび追いつかれる展開が続いており、これで3試合連続ドロー。試合後、負傷明けで先発復帰を果たしたMF喜田拓也は「今は痛みを伴っているけど、この痛みから逃げちゃいけない。追いつかれることが続いていて、この痛みをつなげないと意味がなくなってしまう」と決意を口にした。 【写真】「マジで美人」「可愛すぎてカード出る」現地観戦した女子アナに称賛集まる 横浜FMは3月下旬から続いていたJ1リーグ戦とAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の連戦がひと段落し、ようやく約1週間の準備期間を経て迎えたJ1第11節・磐田戦。ターンオーバー布陣で臨んだC大阪戦から先発7人を入れ替え、FWアンデルソン・ロペスやFWエウベルら主力が戻ってきたが、思ったような勢いは出せなかった。 前半から磐田に押し込まれ、中盤でのミスが相次いだことで前半20分間ほどは完全な劣勢。次第にサイド中心のパス回しに舵を切り、ボールを保持することには成功したが、前半の決定機は終了間際のFWアンデルソン・ロペスのヘディングシュートのみにとどまる低調なパフォーマンスだった。 もっとも負傷明けで3週間ぶりの先発復帰となった喜田によると、前半の試合運びに焦りはなかったという。 「ミスがないに越したことはないし、チームとして増えてしまったのは改善したい。ただそれも含めてサッカー。そういう時にどうゲームを進めていくのか。全部がうまくいくわけではないので、90分でゲームを考えてもいいと思っていた。相手も足を使っていたし、後半になるとまた状況が変わるというのもあった。あそこで崩れないように声をかけていた」(喜田) 実際にハーフタイム後、チームは外回しの攻撃だけでなく、中央にもパスを刺せるようになり、狙いとしている相手を押し込に続けるサッカーを展開。そして後半19分、セットプレーの二次攻撃から相手をペナルティエリア内に足止めし、FWヤン・マテウスのクロスからA・ロペスのヘディングシュートで先制点も奪った。 喜田自身は後半14分、MF渡辺皓太との交代でピッチを退いていたが、先制までの試合運びには手応えを感じていた様子。前半からの流れを受けて「もう少し上手くやりたい思いもあるし、そこは成長すべきところだと思うけど、90分のオーガナイズで現に得点は奪えていた」と一定の評価を下した。 ところが、ここからの試合運びが悔やまれた。 その後はカウンターから決定機をFW宮市亮のコントロールミスなどで決め切れない時間帯が続くと、後半39分に相手FKのクイックリスタートからFWマテウス・ペイショットにヘディングを許して失点。エリア内で競り負けた対応も悔やまれたが、クロッサーのMF上原力也には宮市が寄せ切れていない上、クロスの時点で最終ラインも押し上げられておらず、いわゆる集中力を欠いた状況だった。 「スキを自分たちから作ってしまったのは事実」 そう率直に指摘した喜田は「ゲームの中でプレーが切れるタイミングは往々にしてああいうスキが生まれやすいとみんなが理解している中でも、全てが思い通りにいかないというのは、ピッチの中でしっかり解決しないといけない部分。要因はいろいろあると思うので一つを挙げるのは難しいけど、ピッチ内で解決する力をもう少し上げないとこういう厳しいゲームで勝ち点を拾っていけないのは間違いない」と反省点を口にした。 そうした結果が3試合連続ドロー。4月24日のACL準決勝第2戦では10人での戦いを強いられた中でも、しぶとさを見せていた横浜FMだったが、J1リーグ戦においてはむしろ耐え切れない場面が目立つ。喜田はそうした状況から目を背けることなく、それぞれの大会でチームを取り巻く熱量の違いにも真摯に向き合おうとしていた。 「そこら辺が難しいところだと思う。大会も違えば、捉え方も、見られ方も違う中でチームをコントロールしていくのは非常に難しいもので、選手も人間なのでモチベーションや捉え方は各試合で微妙に違ってくるものもあるとは思う。ただ、ピッチ上での姿勢を変えてはいけないものだとも思う。それは言葉で言うほど簡単ではないので、お互いで高め合っていくしかない。みんなの熱量をどう生み出すかはそれぞれしっかり考えれば行動に移せるとも思う。一人一人がやっていくことも大事だし、それをつなげていくことも大事。続けてやっていかないといけない」 J1リーグ戦の次節・浦和戦は早くも3日後。ホームでのACL決勝第1戦が11日に控えていることもあり、クラブ史上初の大舞台を意識してしまうのは避けられないだろうが、次節からの準備期間は十分にあるため、まずは間近に控えるリーグ戦に切り替えていきたいところだ。 なお、喜田はこの日がJ1リーグ戦通算250試合出場の節目。横浜FMユースから昇格後、プロ3年目まではほとんど出番を掴めなかった過去がありながらも、全てクラブ一筋で積み上げてきた数字とあり、口にしたのは「感謝しかない」という思いだった。 「たくさん出た試合もあれば、出られなかった試合もある。何を言いたいかというと、出たか出ないかではなく、全ての瞬間をこのクラブで毎日、身を削って戦えることがどれだけ幸せなことかを日々感じている。もちろん喜びもあれば、悲しみもある。嬉しさも、悔しさも、いろんな感情があるけど、その全てをこのクラブとともに噛み締めて、乗り越えてこられたのは本当に周りの人への感謝しかない」 「どの状況でもクラブを引っ張っていきたい。自分もまだまだ未熟な人間だし、足りないところも多いとは思うけど、それでも逃げないでチャレンジし続けたいと思っている。誰かがやらないといけないのであれば、自分が責任を持ってやりたいとずっと思って、クラブを変えたいと思って、強い気持ちを持ってやってきたので、それが一つ節目の数字として伝えられることがあるなら感謝。それだけだと思う」 「自分に満足できることは何もないし、周りに素晴らしい人たちがいることに自分が満足しちゃいけない。そういった人たちに返せるものがあるなら、自分の全てをかけてしっかり返していきたいと思っている」。前回アジア王者のホームに乗り込む3日後、そしてクラブの歴史を背負って挑む8日後。復帰早々、あふれる思いを示すには格好の試合が控えている。