惨状今なお廃炉進まず、がれきや核燃料で課題山積…福島第一記者ルポ
世界最悪レベルの原子力災害とされる東京電力福島第一原子力発電所事故。福井県内で稼働中か定期検査中の8基とは原子炉のタイプが異なるが、敦賀支局の記者として事故にどう備えるべきか考えるため、先月下旬に構内を取材した。事故の発生から13年余りが経過した今もなお、高線量で廃炉作業などが進まない現状が垣間見え、被害の深刻さを痛感させられた。(高山智仁) 【写真】東日本大震災の津波でひしゃげたタンク。今も震災遺構として保存されている(5月24日、福島県で)=東電撮影
事故では、1~3号機の核燃料が溶け、原子炉を覆う「原子炉圧力容器」の底を突き破った。1、3、4号機では建屋が爆発。大量の放射性物質が漏れ出た。 取材では、まず見学コースになっている高台に案内され、東に80メートルほど離れた1号機に目を向けた。建屋は高さが45メートル、幅は40メートル。最上階の天井や外壁などが爆発の衝撃で吹き飛ばされ、さびた鉄骨の隙間からは、がれきが床の上に折り重なっているのが見えた。まるで空爆現場のような無残さだった。 このがれきがある限り、階下の使用済み燃料プールで保管する392体の燃料を取り出せないという。
東電は事故後、1号機からの放射性物質の飛散を防ぐ目的で建屋全体をカバーで覆った。しかし、がれきや核燃料などを撤去するクレーンが入らなかったため、がれきに特殊な薬剤を散布した上でカバーを撤去。現在は大型カバーの設置工事が続いている。 取材した日も、建屋の周囲では金属を削るような音が響き渡っていた。大型クレーンが立ち並ぶ光景は、建屋の惨状を除けば街中の建設現場という印象だ。同行した東電の社員は「がれきを動かすと高線量の放射性物質が飛散する恐れがあるので、安全に撤去するためには大型カバーが必要だ。現場は線量が高いため、設置工事には遠隔操作の重機やロボットも活用している」と説明した。
1号機の南にある2号機は、4基の中で唯一、爆発を免れたため、青地に白の模様を施した壁面がほぼ当時のまま残る。その隣では、かまぼこのような形をした3号機の銀色のドーム屋根が不気味な光を放ち、建屋全体がカバーで囲われた4号機は四角いビルに見えた。 廃炉に向けては、1~3号機で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)が最大の関門になっている。国際廃炉研究開発機構の推計量は880トン。東電はロボットを使いながら取り出し、遅くとも2051年までに廃炉を完了させる計画だ。だが、デブリの実際の総量や成分、硬さ、形状などはほとんど分かっておらず、東電社員は「世界初の困難な作業になる」と打ち明けた。