イスラエル首相、停戦案への支持表明 インタビュー発言を軌道修正
(CNN) イスラエルのネタニヤフ首相は24日の国会で、イスラム組織ハマスとの停戦と人質解放に向けた交渉をめぐり、米国が先月発表した案への支持を初めて明確に表明した。23日に人質の一部のみ解放させる合意に応じる構えを示したことが反発を招き、軌道修正した形だ。 ハマス戦闘員の映像、イスラエル軍から提供 バイデン米大統領が先月、イスラエルから提示されたとして発表した停戦案には、パレスチナ自治区ガザ地区での恒久的停戦やイスラエル軍の撤退と引き換えに、人質全員の解放を実現する条件が明記され、イスラエル戦時内閣もこれを承認していた。 だがネタニヤフ氏は23日、国内の右派放送局「チャンネル14」とのインタビューで、人質の一部帰還に向けた「部分的合意」の用意があると発言。ガザ地区でハマスとの激戦を終了する一方で、停戦後も戦闘を続行するとの方針を示した。 この発言に対し、国内の政治家や被害者団体「人質・行方不明者家族フォーラム」が強く反発。同団体はネタニヤフ氏の発言を「前代未聞の国家的失策、戦争目的の不履行だ」と批判した。 野党から戦時内閣に参加し、今月辞任したアイゼンコット元軍参謀総長も「兵士たちは今、人質の帰還という戦争目的のために戦っているのだ」と述べて、ネタニヤフ氏を非難した。 米国務省のミラー報道官は24日の記者会見で、イスラエルがガザ地区で軍事作戦を続行することには反対するとの立場を強調した。 人質・行方不明者家族フォーラムはさらに同日、ハマスによる昨年10月7日の越境攻撃で人質3人がトラックの荷台に乗せられ、連れ去られた場面の新たなビデオを公開した。 戦闘員らが銃を掲げた姿や、「これが犬どもだ」と叫ぶ声も入っている。 ビデオに映った人質の1人、米国系イスラエル人のハーシュ・ゴールドバーグポリンさんは血まみれの顔で、左腕の骨が突き出しているように見える。 ゴールドバーグポリンさんはこの日、ハマスから逃れようと身を隠した場所に手投げ弾が命中して左腕を失った。ハマスが4月に公開したビデオの中でネタニヤフ政権を批判したが、ほかの人質ビデオと同様、発言を強要されていた可能性がある。 イスラエル首相府は23日、ネタニヤフ氏のインタビューでの発言について短い声明を発表し、「人質になった120人が生死を問わず全員帰還するまで、ガザから撤退しないとの表明だった」と説明した。 続いて同氏自身も24日の国会で、「バイデン氏が歓迎したイスラエル案の成立を目指す。われわれの立場は変わっていない」と言明した。事情に詳しい関係者はCNNに、イスラエルがハマスに対し、仲介国カタールとエジプトを通して停戦案へのコミットメントを強調したと述べ、「ボールはハマス側に移った」との見方を示した。 昨年10月7日にハマスに連れ去られた人質をめぐっては、イスラエル首相府がこれまで、少なくとも41人が死亡し、遺体はガザ地区から返還されていないと発表していた。さらにイスラエル軍は25日までに、兵士1人が拉致当日に死亡していたと新たに発表。死亡した人質は計42人に達したとみられる。