広島の災害、行方不明者の人数確認はなぜ遅れたのか?
広島市の土砂災害は、20日未明の発生から1週間以上が経過しました。28日19時に県警が発表している死者は72人、行方不明者は4人。捜索はいまだに昼夜を問わず続けられています。さまざまな課題が浮かび上がっている今回の災害、行方不明者数の確認も難航を極めました。その理由と教訓は何でしょうか。 ■同時多発の土石流、捜索の手阻む 行方不明者数は当初、広島県警発表で7人ほどでしたが、2日目の21日に突如、51人にまで急増。その後も52人にまで増えたかと思うと47人、41人と減っていくなど、大きく揺れ動きました。時間とともに身元が判明していくという事情を超えて、当局が混乱していることは誰の目からしても明らかでした。 一番の原因は、今回の災害があまりにも「同時多発」で、救助や捜索が追いつかなかったことにあります。未明の3時間に平年1カ月分の降雨量を超える集中豪雨で、密集した住宅地の崖は一気に崩壊。土石流の発生場所は同市安佐北区と安佐南区の11キロで少なくとも50カ所にのぼったと見られています。消防、警察には通報が殺到。被害の全体像がつかめぬまま一カ所の地区に入ると、大量の土砂やがれきに阻まれ、狭い傾斜地で車両も進めず、捜索は大いに手間取りました。 筆者も発生3日目の22日に安佐南区緑井7丁目を回りましたが、数軒の家が泥に埋まっていても手つかずの地域が多く、「この辺にはまだぜんぜん捜索が入っていない」と住民の悲鳴が。ようやくたどり着いた警察の捜索隊も「ここで何人を捜せばいいのかは聞いていない。とにかく1カ所ずつしらみつぶしにしていって、次に移るしかない」と漏らしていました。 ■核家族化、プライバシーも壁 現場は家が一軒丸ごと跡形もなくなっているような状況です。「一家全員と連絡が取れない」という事態が多発したのに加え、高齢化や核家族化が進み、地域のつながりが薄いこと、さらに夏休みで外出していたり、逆に遠方から家族が戻ってきたりしている可能性など、流動的な要素が次々に浮かび上がりました。 もう一つは、捜査当局の縦割りの問題が挙げられます。現場の捜索を担っていたのは主に広島県警と広島市消防局。それぞれに把握している地域の情報や被害情報が食い違い、それをすり合わせるのに時間がかかりました。