日本のネオアコブームに大きな影響を与えたベン・ワットの『ノース・マリン・ドライブ』
本作『ノース・マリン・ドライブ』について
83年にリリースされた、ワットの記念すべきデビューアルバム。収録曲は全部で9曲。1曲(ボブ・ディラン作)を除いて、全てオリジナルである。基本的にはエフェクター(コーラス、フランジャー)を通した生ギターだけでの演奏(ギターは多重録り)で、曲によってはアルトサックス(演奏はブリティッシュジャズ界のベテラン、ピーター・キング)がソロを取る。アルバム全編を貫く寂寥感のある静謐さは、聴いていると何物にも代えがたい幸福感に浸ることができる。僕は本作を聴く時、一曲一曲を聴くというよりはアルバムの持つ全体的な雰囲気を味わうことが多い。とはいえ、どの曲も完成度は高く、特にボサノバタッチの曲での彼のヴォーカルやギタープレイは素晴らしい。結局、本作は『ピロウズ・アンド・プレイヤーズ』と入れ替わるように、インディーチャートで1位となった。 なお、CD化に際して、前述したワットの5曲入りEP『Summer Into Winter』が追加収録されているが、本作とは若干テイストが違うので、別々に聴くことをオススメする。 この後、ソーンとのEBTGで世界的にブレイクするのだが、ゴージャスな音になりすぎていて、僕の中では本作『ノース・マリン・ドライブ』を超えるベン・ワットの作品はない。生ギター1本でポストパンク時代を生き抜いた彼の渾身の一作を、ぜひ聴いてみてください。 TEXT:河崎直人 ※OKMusicでは第1&第3金曜日に『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』を配信中! 300を超える洋楽名盤の数々もアーカイブ! 是非ともチェックを!!