なぜドイツのスポーツ組織では18歳の理事が生まれるのか? 日本特有「実績信仰」の弊害
なぜ欧州では30代の校長が生まれるのか?
若い人たちが責任あるポストにつきやすい仕組みややり方があるのだろうか。益子はドイツで興味深い取り組みを耳にしたという。 「ガバナンスがしっかりとしていると聞きました。例えば27歳以下から2人というのがルールとして決まっていると伺いました。さらにそれぞれの年代ごとにあるいは女性が何人、何%以上は入るというルールもあるのかもしれません。今日本でも、女性が何%とかっていうのでいろいろやっていますし、男女比はガバナンスに出されて改善が少しずつ進んでいますけど、ただ年齢のところはまだほとんどないですよね」 こうしたガバナンスが整理しきれない背景に日本特有の“実績信仰”があるかもしれない。理事とか役員とかそうした役職における実績がない人を招き入れるのにはなかなか積極的になれない。“前例がない”ことをするのにどうしても奥手になってしまう風潮がある。 だが、誰でも最初は実績はないのだ。誰もが経験を少しずつ積み重ねなければならない。なのに、今すぐに結果を出さなければならないという縛りがきつすぎると前に進めない。適性のある人をポストに据えることで生じるメリットに目を向ける考えがもう少し強くなってもいいのかもしれない。長期的な視野で見たときに間違いなく大きな力になりうるはずだ。
「ここ2年ぐらいが勝負なんじゃないかなって」
また、例えばドイツやオランダでは、学校で校長になる人は、そのための教職を大学で取得しなければならないと聞く。学校で先生をやる人と校長をやる人に求められるタスクとスキルがまったく異なるからだ。校長として学校運営するためには経営学を学ばなければいけないし、人材マネジメントも必要だし、チームビルディングへの知識も必須になる。それは子どもたちと向き合う先生に求められるそれとまったく別のタスクでありスキルだ。30代で校長やダイレクターを務める人が欧州では普通にいる。 日本ではどうだろう? 同じように指導者やスタッフにしても、それぞれスペシャリストとして適材適所で人材育成をして、輩出していく仕組みやシステムづくりがあったほうが、歯車はうまく回るようになる。若いころから適性を持っている人材が経験を積んで、いろんなことを学べる環境が当たり前にあってほしい。 「いまの時代、本当に学ぶべきものがたくさんあって、どんどん進化しています。正直時代の変化についていくのに必死ですよ。いろんなことがどんどん多様化していく。スポーツだけじゃなくって、ほんとうにいろんな角度から学ばないといけないんだなって実感しています。すごく困ってます(苦笑) でも学校も含めて今が変化のときです。今後数年でいろいろ変わってくるでしょうし、変わらないといけないでしょう。スポーツの立ち位置とかあり方とか関わり合い方とか、再認識しなきゃいけない時期だと思うんです。ここ2年ぐらいが勝負なんじゃないかなってすごく感じています」 変わるためにはチャレンジしても受け止めてもらえるがっちりとした土台が必要だ。そしていいことはいいと言い、ダメなことはダメと毅然と伝えられる“大人”の存在が大切になる。甘やかすか厳しくするかではない。若手かベテランかでもない。やるべきことを正しく継承していく人材育成への取り組みが欠かせないのだ。 <了>
インタビュー・構成=中野吉之伴