なぜドイツのスポーツ組織では18歳の理事が生まれるのか? 日本特有「実績信仰」の弊害
「僕の前任者はもうすぐ60歳になる年だったんですが…」
筆者もここ最近ドイツのとある地域サッカー協会の審判インストラクターで理事を務める方と話したことがあるが、その彼も35歳。その地域で審判に興味がある人の最初の講習会を担当し、地域の審判団をまとめ上げる役割を担っている。理事交代はどのような経緯で行われたのかを尋ねてみたら、次のように答えてくれた。 「僕の前任者はもうすぐ60歳になる年だったんですが、『自分のような世代の人は後進に譲らなきゃいけないから、あとは任した』という感じで席を明け渡してくれたんです。僕はもっと責任感を持って取り組みたいと思っていたので立候補しました」 にこやかに、当たり前のことのように話してくれた彼。そこでスッと手を挙げる彼もすごいと思うが、そのような環境をつくり出した前任者の引き際の見事さもとても印象的だ。益子も同意してこんな話を続けてくれた。 「秋口の10月終わりから11月に両国指導者による日独スポーツ少年団指導者交流が行われています。ドイツから来てくださった指導者の方たちとの歓迎会の初日にご飯を一緒に食べたんですけど、みなさんすごく若くて。そこでもびっくりしました。もちろんベテランの方も2人ぐらいいるんですけど、本当に20代、30代と若い方たちが率先して日本に来ているんです。やっぱり意識の高さを感じますし、日本からももっともっと若い指導者さんたちに、外に出ていってもらいたいなっていう思いがすごく強まりました」 日本でも若い世代がもっと積極的にチャレンジできる環境づくりへの変革が求められているのではないだろうか。長年尽力されている方々を貶めようという意図はまったくない。そのような方々の努力と取り組みがあったからこそ、今の日本のスポーツの土台が築かれたのは間違いない。 ただ、責任感の強さが逆に若い世代が成長するチャンスを阻んでしまっているなら、それはもったいないし、悲しいことではないか。自分が抜けると心配だからと、ずっと要職に留まることで生じる停滞感やデメリットについても、もっとオープンに考察されるべきだろう。 「ドイツで若い世代の方々が活躍しているのを見て、いつまでも重鎮に頼るようではダメだなっていうのはすごく感じました。ではみなさん任期ギリギリまで勤められる方が多いなか、どうしたら若い人たちが入ってこれる仕組みや雰囲気をつくれるのか。ドイツから帰ってきてこれまで以上に考えるようになりましたね」