会計と落語〝真逆のコラボ〟が生むビジネス訓 長年の異業種コンビの相方「笑点」新レギュラー・立川晴の輔に期待
【マネー秘宝館】 日本テレビ系の人気番組「笑点」の新メンバーが発表になりました。3月をもって引退した林家木久扇師匠からバトンを受けたのは落語立川流の立川晴の輔。 これを知って私はぶったまげました。というのも、私と彼は長年一緒に「会計士×落語家」コラボとして講演・連載の仕事をしてきた間柄です。〝相方〟の抜擢に私の元にまで「おめでとう」のメッセージが届く大騒ぎ。えらいこっちゃ。 最初に私が異業種コラボの話を持ちかけたとき、晴の輔は「う~ん」と難色を示しました。会計士である私とビジネス関連で仕事をするのは当時、若手の彼にとってハードルが高かったようです。それでも何とか納得してくれて、恐る恐るという感じで2人の仕事がスタートしました。 彼との異業種コラボ、私にはひそかに勝算がありました。なぜなら、あらゆる点で正反対の会計士と落語家だからこそ組みやすいのです。こちらはスーツ、あちらは着物。こちらはすべてを数字に落とし込む細かさ、あちらは「おおっ三〇〇両!」で済ませて一切、換算しない大胆な人たち(笑)。 そして、最新の経営トピックと古典落語の演目に「重なりをつくりやすい」ことも組みやすさの理由でした。有名な「抜け雀」という古典落語の演目があります。宿屋の夫婦が絵描き名人の実力を見抜けず、一文無しと間違えてしまうお話。私はこれを最近流行の「人的資本」の話だと読みます。「人間」が富を生み出す絵描き職業、泊まったのは潜在的収益力の高い人間にもかかわらず、宿屋の夫婦は客を無一文の飲んだくれと誤解してしまいます。これはまるで「人をうまく使えない」企業のようじゃありませんか。 古典落語の演目には人間の性(さが)であるとか、商売の基本といった「根本的な話」が多いです。一方、最新の経営トピックであるコンプライアンスやブランドといった項目も、突き詰めていくと人間や商売の根本に行き着きます。 会計士である私と落語家の晴の輔がそれぞれの角度から「根本的に大切なこと」を表現すれば、きっとおもしろいものをつくれる。そう思って2人で「コンプライアンス×藪入り」「金融危機×持参金」「孫子の兵法×紙入れ」などのコラボ演目セットをこしらえ、あちこちで演じてきました。