【ハイライト動画あり】フィジー代表に力負けした日本代表。圧力に屈した経験が成長の糧になるか。
痛恨のトライを奪われたのは前半32分だ。相手のパスをWTBマロ・ツイタマがインターセプトして前進し、フィジー陣中盤でチャンスを得る。一気にフィジー陣深く入ろうと、SO立川理道が防御裏へ地面を這うキックを蹴ったところ、タックラーの足に当たってボールは日本代表陣方向へ。転々とするボールをWTBヴアテ・カラワレヴが確保してそのままトライ。マンツのゴールも決まって10-10の同点となる。37分、HO原田衛が相手の顔に肩がヒットする危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)となり、さらに我慢の展開が続く。ここは、PR竹内柊平が急きょスローイングの代役を務めるなどしてしのぎハーフタイムを迎えた。
前半の日本代表は、フィジー代表の強力スクラムに対して低く結束した姿勢で耐え、ラインアウトもワーナー・ディアンズが2度のスチールに成功するなど健闘していたが、後半はフィジカルバトルでフィジーに圧力を受け、徐々に体力を削られた。後半16分、マンツにPGを決められて13-10でリードされると、自陣からの攻撃中にハンドリングエラー。19分、フィジー代表の交代出場のWTBポニパテ・ロンガニマシにトライを奪われる。その後もフィジー代表の出足鋭いディフェンスに圧力を受け、パスを後逸するようなミスが続いた。強いランナーが次々に走り込んでくるフィジー代表の攻撃にディフェンスを集められて、外のスペースを攻略されるなど、次第に足がついていかなくなり、次々にトライを奪われる。あっというまにスコアは、41-10になった。
大差になって席を立つ観客も多かったが、後半38分、ツイタマがトライし、最後まで見守ってくれた観客を喜ばせた。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、陣地を大きく返すロングタッチキックほか、卓越したスキルで日本代表を苦しめたケレブ・マンツが受賞した。
試合終了の笛が鳴り響くと、フィジー代表の多くの選手が芝生にあおむけに倒れ込んだ。その姿は、国の誇りを背負って戦うテストマッチのタフさを示していた。フィジカルも個々のスキルも高いフィジーの選手たちが、まさに「ぶっ倒れるまで」走り続けて日本代表に勝ったのである。彼らを上回るために日本代表は途方もない努力を続けなければならない。それを選手が体感したことは大きな価値があった。唯一のトライをあげたライリーは言った。「残念ですが、力不足です。(強くなるためには)年間を通じて強い相手と戦っていくしかない」。秋には、ニュージーランド、フランス、ウルグアイ、イングランドとの戦いが待っている。ジョーンズHCは「次はいかにニュージーランドに勝つかを考えたい。戦術もスマートに戦う。史上初めてニュージーランドに勝つ日本代表になりたい」と一戦一戦全力で戦うことを誓った。
村上 晃一