軍事以上に重要なのは、目の前の厳しい経済状況のはずなのに…「防衛増税」開始時期は? 議論の現状を専門家が解説
◆賛成派・反対派にとっても“議論する雰囲気”ができていないまま進むのは問題
ユージ:自民党税制調査会での議論や宮沢税制調査会長の発言、塚越さんはどのようにご覧になりましたか? 塚越:一言でいうと「納得できない」です。まず、定額減税も来年6月以降と遅いです。「減税より給付のほうが早い」という意見もあるのに、そこは、ほとんどスルーされています。 加えて、減税からの増税と制度をいじると、そもそもコストがかかりますよね。また、ニュースも、どうしても細かな金額や条件を報じざるを得ないですが、これだけ複雑だと分かりづらいです。結果的に政権の政策が国民を煙に巻いているようにしか感じられず、圧倒的な「政治不信」を招いていると思います。 ユージ:おっしゃる通りです。複雑すぎて、追っているだけで疲れて分からなくなりますよね。 塚越:次に見逃せないのが、宮沢税制調査会長が岸田首相の従兄弟で、同じ広島県を選挙区にしている点。そして宮沢税制調査会長は、財務官僚出身で、要するに財務省寄りの方です。一般的に、財務省はさまざまな理由で増税を求める傾向があると言われています。 増税を求める傾向があるので、ある意味、今の政権は財務省の猛プッシュが効いている状態です。いい悪いは別として、経産官僚が多かった安倍政権や総務官僚とパイプが強かった菅政権と大きく異なります。 その上で、増税の意味がどこにあるのかは疑問に思いますよね。「減税して増税」というのは、アクセルとブレーキを同時に踏むので、かつてのコロナ対策と同じこと(感染拡大を防ぎつつ、経済対策もする)をしている点がおかしいです。 「防衛増税」にどれほどの意味があるか、国民的議論になっていないのに岸田首相が突っ走っている点。私は、そもそも防衛増税に反対ですが、賛成する方にとってもミサイル購入やどうやって使うのか、議論が盛り上がってもいないですし、詳細に議論できる人がどこまでいるのかという話です。その状況で突っ走っていいのかというのは、賛成派の方にとっても、もっと考えるべきだろうと思います。 世界中どこでも、危機を煽れば恐怖によって支持率が上がったり、人の意見は傾きがちになったりしますよね。そういう意見もありますし、軍事以上に重要なのは目の前に広がる非常に厳しい経済状況です。 この状況で、増税までして軍事に力を入れるのであれば、それだけ政府は国民に周知する必要があります。私たちが注意しなければいけないのは金額の話ではなく、そもそもこれ(防衛増税)がいいのか悪いのかについて、メディアも周知していく必要があります。 (TOKYO FM「ONE MORNING」2023年12月6日(水)放送より)