パッティングには「利き目」が重要。試行錯誤の上、J・ラームが編み出した構え方とは? 【解説「ザ・ゴルフィングマシーン」#105】
「ゴルフ科学者」ことブライソン・デシャンボーの「教科書」であり、50年以上も前に米国で発表された書物でありながら、現在でも多くのPGAプレーヤー、また指導者に絶大な影響を与え続ける「ザ・ゴルフィングマシーン」。その解釈者でインストラクターでもある大庭可南太が、前回に引き続きTPI(Titleist Performance Institute)の取り組みについて紹介する。
みなさんこんにちは。ザ・ゴルフィングマシーン研究家で、ゴルフインストラクターの大庭可南太です。さて今回も、先日参加してきましたTPI(Titleist Performance Institute)のセミナーの内容から、ゴルフと人間の「視覚」についての研究内容について紹介をしたいと思います。
ゴルフが難しい理由
ゴルフが難しい理由の一つに、目標に向かってボールを打ち出すスポーツであるのに、実際に打つときはその目標方向ではなく地面(ボール方向)を向いていなければならない点が挙げられます。ボウリングで隣のレーンを向きながら投げるとしたら、さぞ難しいだろうと思いますが、ゴルフはこういうことをデフォルトで要求してくるスポーツです。 このためゴルフでは、ボールを「後方から見た」目標までのイメージと、いざアドレスをしてやや「上方から見た」目標へのイメージが、できる限り合致しているほうが有利になります。そしてこれがフルショットから、より繊細なパットやアプローチになるともっと複雑になってきます。具体的には ・傾斜とボールの曲がりの判断 ・ボールスピード(強さ)の制御 ・狙ったところに打ち出す技術 の三つの能力が求められることになりますが、これらすべてに重要な影響を与えているのが「視覚」です。
利き目と利き腕
人間には利き腕と同様、「利き目」が有るということは多くの方がご存知でしょう。例えばレーザー距離計を右目で覗いているのであれば、その方の利き目は右目です。しかしこの利き目と、その反対側の目の関係性が、ゴルフにおいてかなり重要な影響を与えている可能性が高いのです。 利き目と反対側の目で見ると、利き目で見たときと映像がズレます。つまり人間は二個のカメラで物体を捉えて、その映像の差で物体までの距離感を把握するとともに、脳内でその二つの映像が一つに見えるように「補正」をしています。この「脳補正」のクセによって、実際よりも遠くに見える、あるいは近くに見えると言った距離感のクセが出てしまうのです。 さらに、利き目が右の場合にはボールを後方から見ている感覚が強くなり、左の場合には真上から見ている感覚が強くなります。実は利き腕が右手の場合、左目が利き目の方がゴルフでは有利なのではないかと言われています。この利き腕と利き目が逆のケースを「クロスドミナンス」と言いますが、タイガー・ウッズや、ジャック・ニクラスといった名プレーヤーにはクロスドミナンスが多いと言われています。しかしこれは全体の20%に過ぎず、また残念ながら利き腕や利き目を大人になってから変えるのは難しいようです。