アフリカの水問題解決へ…福井出身の女性起業家らタッグ 福井県越前市の企業と、井戸水料金回収などシステム普及へ
福井県福井市出身の女性起業家がアフリカ東部ウガンダの水問題解決に取り組んでいる。井戸水の料金回収システムを普及させ、維持管理の課題解決に尽力している。同国で生活排水関連事業を展開する予定のテラオホールディングス(越前市)とタッグを組み、アフリカの上下水環境の改善を目指す。 スンダ社の装置が設置された井戸で、住民と記念撮影する坪井さん(中央奥)=2023年 女性は坪井彩さん(35)。2020年に知人ら4人で「スンダ・テクノロジー・グローバル」(京都市)を立ち上げ、CEOに就任した。ウガンダ農村部でプリペイド・従量課金型の井戸水料金回収システムの事業を手がける。同国で普及する電子マネーを活用し、井戸水の使用量に応じた金額を残高から引き落とす仕組み。システム一式の販売と利用手数料が同社の収入となる。 坪井さんは18年、国際協力機構(JICA)の海外協力隊員としてウガンダで活動。農村に井戸が設置されても、維持費が回収できないという悩みを聞き、この事業を考案した。「問題は貧困ではなく、仕組みだった」と語る。 井戸は政府などが設置後、利用者代表で管理委員会をつくり、維持管理に当たる。手押しポンプ式の井戸は部品を定期的に交換する必要があるが、「維持費を現金で回収する信頼性の問題や、水の使用量に応じた徴収の仕組みがない不公平感から、支払いを拒む人が多い」(坪井さん)。貧困層は一定数いるものの、国民の多くは携帯電話を所持するなど井戸の維持管理費の支払い能力はあり、プリペイド・従量課金の仕組みを井戸に実装。19年に1号機を完成させた。 現在は約250台が稼働しているが、「国内だけで井戸と共同水栓が10万カ所以上ある。まだ全然足りない」と坪井さんは語る。量産化に向けた研究を進めており、目標は「アフリカ全土の水問題解決を見届けること」だ。 一方のテラオホールディングスも、アフリカに進出する構想を練っていた。日本の浄化槽技術をウガンダ各地に展開し、メンテナンス人材を現地で育成。持続可能な生活排水処理システムの普及を目指す。構想実現のため社会起業家育成枠で人材を募り今年、廣瀬遥さん(23)=埼玉県出身=を採用した。廣瀬さんは来春からウガンダに駐在し、現地責任者として事業を本格化させる。 2社はJICAの紹介で知り合い、タッグを組めば上下水両方の課題を解決できると共鳴。テラオ社が福井銀行のSDGs私募債を活用し、スンダ社にノートパソコンを贈ったほか、スンダ社のクラウドファンディングにも出資した。テラオ社の寺尾忍CEO(46)は「目指すところが同じで、一緒にアフリカの水問題解決に取り組んでいきたい」と意気込みを語った。
福井新聞社