『ドラクエ3』リメイク版に絶賛と酷評のなぜ、中年ゲーマーが力説する「全世代に愛されるべき魅力」とは?
ファミコンからドラクエをプレイしていた往年のファンの中には、実は3Dに苦手意識を持っている人もいて、「3Dだから」を理由にプレイを諦める人もいた。2017年発売の『ドラクエXI』では、スイッチ版・3DS版で3Dモードと2Dモードを選択できるようになっていたが、今回のドラクエ3ではHD-2Dを取り入れつつ、2Dに振り切ったのであった。 現代のゲームをやっていて目が肥えているプレイヤーの中には「グラフィックも言うほどたいしたものではない」という感想を抱く人もいたが、「美しくて素晴らしい」としている人の割合が多かった。原作やスーファミ版をやっていた人たちは、知っていたあの世界が美しく生まれ変わった姿に驚嘆するようである。 ● 実は若い人もプレイしているっぽい 『HD-2D ドラクエ3』 では、高評価勢・低評価勢が共通して「ここはダメ」としている点は何か。 ・戦闘のバランスが大味すぎる ・ラーミア(空を飛ぶ乗り物)が遅い 職業や特技の追加で、戦闘に多彩な選択肢が生まれて戦略性が増す……部分もあるようなのだが、特定の特技や魔法が強すぎて(お手軽に超ダメージを叩き出す特技“まものよび”と、ボスのほぼ全てを眠らせる魔法“ラリホー”)、戦略もクソもないくらい戦闘のバランスが崩壊しているらしい。 また、物語終盤で手に入る空飛ぶ乗り物ラーミアは、敵にもエンカウントしないし海も山も飛び越えて移動できる爽快な乗り物なはずだが、乗っている際の体感スピードがかなり遅く感じるようで、多くのユーザーにとってそれが不満だったようである。 そのほか、細かい「いい点・ダメな点」はいくつも上がっていたが、多くのプレイヤーが共通して挙げていたのが上記のとおりであった。
高評価勢の中で特徴的に多かったのは「なぜこれほど悪評が聞こえてくるかわからない。普通に良ゲー・神ゲー」という声で、低評価勢の意見で多かったのは「この完成度で約7700円のフルプライスは高い」というものであった。 初めてドラクエシリーズをプレイする10代の若者が「面白い」と言っていたり、『ドラクエ3』という名作を愛する往年のファンが「リメイクでも文句なく100点満点の出来を披露して万人を黙らせてほしかった」とこぼしていた様子を見たりするにつけ、「どれくらいの期待をかけていたのか」も作品への評価を大きく左右しそうである――と感じた。 プレイしている年齢層はいかほどのものなのか。やはりよく言われる通り、原作をリアルタイムでやっていた現在30~40代の中年プレイヤーが多いのか。 ここは順当に、やはり30~40代のプレイヤーが主軸となっているが、若い世代がまったく取り込めていないかというと、そうでもなさそうである。発売日当日に店頭で並んだ人から「行列の年齢比は自分世代(30~40代)と若い人の半々だった」との話を聞いたり、ゲームをやる周りの若い人たち(10~20代)のアンテナに『HD-2D ドラクエ3』は引っかかるようで、一定以上の興味を持たれたりしている。 ● 中年ゲーマーが夢見る 「全世代に愛されるドラクエ」 筆者自身が40代のバリバリ中年ゲーマーなので、聖なるゲーム・ドラクエに加齢臭をつけすぎないように一定の距離をおいて応援しているし、若い人によるものであろう「現代ではドラクエは老人のやるゲーム」といったネットの雑な暴言を謙虚な気持ちで受け止めなければならないと己を律しているが、若者もドラクエを好いてくれるならひょっとして……と、ドラクエが全年齢に愛される世界を夢見ていいのかもしれない気がしてきた。そういう可能性を感じさせてくれたのが、今回の『HD-2D ドラクエ3』であった。 なお、ドラクエシリーズの『1・2』は時系列では『3』のあとに当たり、HD-2D版『1&2』は2025年に発売が決定している。すっかり中年になった今でも、あの冒険の日々が続いてくれることが何よりうれしい。
武藤弘樹